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1969年から72年まで7回中6回成功し、12人が月に立ったアメリカのアポロ計画。さらに中国が送った探査機が写した、2014年の月面写真も公開されています。ところがそれらの写真に、素人から疑惑の声が出ていました。

星空の疑惑です。月面の真っ暗な空になぜか星がひとつも出ていないから、写真はニセの月面だと言う。アリゾナ州の砂漠にでも建てたスタジオで撮影した世紀の大陰謀。地球の巨大な屋内スタジオの黒塗り天井に、光る星の点々を美術さんが作り忘れたポカ。「それを見抜くことのできた僕の何と賢いことか」。

その主張は、カメラの仕組みを知る者には、相手にする気も起きないほど初歩的な勘違いです。しかし物ごとを知らない人ほど、けたたましく勢いが強いもので、裏世界でこじれています。

「それはこういうこと」と親切な人が現れて説明を始めても、当たり前と感じながらだと舌足らずで、めんどうになって一言であしらったりもします。すると疑った側は、極秘の機密をかぎつけた自分に対して、闇組織が反応して煙に巻いたと、さらに本気で疑いを深めるわけです。

プロ写真家が一番わかる解説はこうかも。月面は13EVで撮り、天文雑誌の星空はマイナス7EVで撮り、晴天のベルリン市街は13EVで撮ったと。

カメラに限らず道具の全自動化が徹底すると、物の仕組みを知らないだけでなく、仕組みという概念があること自体に気づかないユーザーが増えます。人間の生身の技能が昔より下がった状態です。身近な例は電子炊飯器を使わない炊飯。べちゃべちゃ。何でもできるが腕はないという、肥大した全能感と乏しい実力の落差が人類の近年の悩みでしょう。
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|02-29|写真とカメラの話題||TOP↑
NASAの宇宙望遠鏡の写真で、星雲は抽象画的な花形です。我が銀河系(天の川、ミルキーウェイ)の内にあるガスの広がり。この冬も目視できるオリオン座の星雲も銀河系の中にあり、美しいピンクは水素元素の色。

そんな星雲も混じって、恒星が数千億個集まった上位団体が銀河で、銀河系の外で起きる大事件に、銀河同士の衝突があります。巨大な銀河と銀河が半分めり込んだ写真もあって、しかし奇妙な衝突です。

太陽の隣の恒星は40兆キロメートル離れ、月旅行で4日かけた人類史上最速の乗用ロケットで11万年かかる計算。文明史の10倍の年月にもなり、速度を100倍に上げても1100年以上。仮に異星人がいても地球に来ない最大の理由がこの距離で、生き物が乗った時点で漫画の世界になって、だからボイジャーも人が乗らずに無人です。

言い換えれば銀河の中はガラガラで、中の恒星は実にちっぽけ。銀河同士が合体しても、恒星同士がドスンと当たる確率はほぼゼロでしょう。銀河の衝突は遠目には壮大でも、密度だけなら真空同士の素通り同然。

宇宙には弱いながら到達距離が無限大の重力があるから、二つの銀河は慣性で行きつ戻りつ、もつれ込んでいつかは一体になる理屈です。我が銀河系と隣のアンドロメダ銀河も、いずれ衝突してひとつになるそうです。

上位団体が衝突しても個人は衝突しない、何か民間交流イベントでも暗示させますが、団体にどんな終わりがあるかは案じるところ。EUはさしずめ銀河が集まった銀河団にでも相当し、最近は合体強化より分裂の気運が出てきたという。集団への貢献度に、国別の差がありすぎる問題で。
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|02-26|写真とカメラの話題||TOP↑
バクチ打ちの結末は、碁や将棋の「待った」にも似るという。必勝のつもりで賭けて、負けたと知れば、賭ける前に全てを戻したくなる心理です。

この心理は今日、コンピューターのゲームソフト再起動や電源の入れ直しになぞらえて、「リセット願望」などと呼ばれて現代の若者気質として語られます。別に若者に限らず、いかにも平成日本の光景ですが。

別にアートフェアに限らず、各業界の見本市に参加すると、似た心理は芽生えるかも知れません。「ウケないなら、参加しなかった」と。結果を知ってのそうした後悔や不満は参加意義の見込み方にも左右され、一発当てる夢に片寄るほど、当て外れの落胆と未練が強まる理屈でしょう。

では売れる美術家はといえば、意外に売れない想定で構えています。チャンピオンでなくチャレンジャーの意識で、継続効果に重点を置く傾向です。美術は音楽よりシンデレラが出にくいから、一歩ずつ前に進もうと。

企画もワンチャンスに賭けるだけでなく、アフター営業期間や作者との打ち合わせも増えました。本来は回収が困難なお客の感想言葉も、どこかで拾えるかも知れないし。ひと昔前に欧米展の老舗団体が高い参加料だったのは、余韻をつくるための現地アトラクションにもコストをかけたせいもあったでしょう。

バクチ説ですが、芸術は本来長丁場の投資です。口ききで一度だけ受賞したセザンヌや、それもなく応募全敗のゴッホも、結末はバクチ人生でした。誰にとっても不要物だった19世紀のゴミ絵画が、20世紀に教科書にものる名画となったという。この手の歴史修正が多々転がっています。
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|02-24|芸術の秘密と謎||TOP↑
左右対称の造形は、デザイン物に見える難点があります。アートの場で相手の関心は下がってしまい、しかも安価なカテゴリーに向かうから、買い取り希望価格も下がるでしょう。非対称に作った方が有利です。

「名画は何が優れているのか」の解説を見かけます。有名絵画の秘密を、図形や数字を使って分析した本やテレビ番組もよくあります。よく出てくるのは三角形になっている配置や黄金比で、お寺の鐘やスカートのタテヨコ比で説明した美の根拠が世に出回っています。

昔の画家は、目分量の感覚で描いたのでしょう。それを後で計測し、法則に合う例だけ集めた雨男的な解釈といえるもの。突っ込みどころが多いこじつけ論に思えますが、ひとつ信じられるのは均等を崩す利です。

三角配置も黄金比も、割り切れないものです。フォーマルでもランダムでもない特異なあいまいさが完成度を感じさせる、心理学の世界。食卓で料理を並べる時も、対称や幾何学配列にしないで、フォーマルでもランダムでもない味ある並べ方をとるのが普通でしょう。堅苦しさが消えて自由感が増し、おいしく見せる無意識の工夫として。

日本の造形は、非対称が伝統とされます。書道も生け花も、楽焼きのひねった茶碗も非対称の美です。しかしそれもよく見ると、対称に近くて崩している際どい美なのです。規則性のない不定形とはまた違って。
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|02-22|世界に伝えたい日本の奥義||TOP↑
「スローハンド」「ウーマントーン」「アンプラグド」など伝説が多いエリック・クラプトン。ロックギタリストの中で神格化が著しい彼の初来日は1974年。当時の音楽雑誌に出ていた評論家の手記。「武道館で『バッヂ』のイントロが鳴った瞬間、涙で見えなくなった」。

しかし彼の最も有名な曲はクリーム時代ではなく、デュアン・オールマン含む後のデレク・アンド・ザ・ドミノス時代の『レイラ』で、そうくると「ははーんあの話か」と。『レイラ』は二枚組LPで、ジャケットは少女の抽象画です。原画はクラプトン所有で、『レイラ』で無断使用されていたとの意外な話。

クラプトンは『レイラ』40周年リマスター盤で、同じ絵を立体化してジャケットに再び使い、その改変のみが画家の遺族に敗訴した裁判ネタが先日報道されました。しかし40年前の無断使用は不問にしたフランスでの判決に、遺族は控訴するという。

このニュースで日本に目立つ意見は想像どおりで、「使ってもらえた画家の側がありがたく思うべし」というもの。日本で横行する「やりがい搾取」にも通じる感覚で、この風潮に最も反対している国はアメリカです。

東京五輪エンブレムの採用デザイナーは百万円ぽっきり受け、数十億円のグッズ売上分は公募側が巻き上げる規約に、アメリカのデザイナーは搾取的だと意見しました。日本のマスコミは、こういう話題にはいつも無関心です。4Kテレビの録画問題を除けば。

アメリカが著作権に厳しい理由は、世界最大のオリジナルコンテンツ供給国だから。一例はハリウッド映画。TPPで日本の著作権保護期間は今の50年から欧米並みの70年に伸びる予定で、国内では困惑が言われます。しかしタダで使える日が遠のく悩みより、著作財産権の延長を富国につなげる方へ切り替えるのが得策で、この話題は参加者とも時々あります。
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|02-20|芸術の秘密と謎||TOP↑
少し前の話題で、100円玉や500円玉にドリルで穴を空けていた手品セット販売業者が逮捕された事件。耳寄りなのは、ネットの議論でした。

「タバコがコインを貫通するマジックは、コインに穴を空けてあると誰だってわかるでしょ」の声が出てきたのです。しかしわかった人は過去に少なく、トリックに見当がつかずに年月過ぎた人がはるかに多かった。

タネも仕掛けも、なぜ日本国民の大半がわからなかったのか。それはコインに穴を空けた疑いを、念頭から外していたからです。なぜ外したのか。

80年代以前、10円玉の周囲をヤスリで削って100円玉サイズまで小さくし、自販機で使う事件がありました。当時のニュースも、通貨の加工は違法だとはっきりと解説していたのです。紙幣に住所を書くだけでも刑事犯罪だとは、多くの国民の頭にすでにありました。

だから、タバコを100円玉に刺すタネがわからなかった。人体切断のステージマジックで、本当に切断して後で遺体を火葬している可能性を疑わないのと同じです。対して、硬貨や紙幣は持ち主の自由だと思っていた人や、加工を違法と知らない少年たちの目には、貫通マジックがあまり不思議でなかったわけです。「穴を空けたら簡単でしょ」と。

ここで注目できるのは、知識が乏しい人の方が視野が広くなる現象もあること。裏返して、約束ごとを知る者に生じる思考の制約です。美術でも鑑賞のツボを心得た造詣の深い人は、新しい創造にはじかれやすく、概して次世代アートについていけない。妨害する側に回ったりして。美術を勉強した先には、許せる範囲が狭まるマイナス面も隠れています。
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|02-18|芸術の秘密と謎||TOP↑
日本の絵を欧米で展示する。しかし、きれいに徹した絵は伸び悩みます。日本の絵の何割かはきれい型で、日欧文化ギャップの洗礼を受けます。

そこに、作品の梱包も相関するのです。作品を一点一点ていねいに包み込み、厳重に何重にもくるんである荷物は、同じフラグが立っています。

ドイツで何度も売れた作家の新作が届いて、少し驚きました。ビニール袋にまとめて放り込んだみたいに簡素で、作品同士こすれ、軟らかいのは曲がり、一部は角が折れて。顔料が落ち、粘着も張り付いて。クッションも簡略。それで結局、現地で目をつけられ売れる。これはいったいどういうことか。

梱包の態度は、制作の態度と似ます。絵を物理的にかばって守ってしている場合、制作の筆でもかばって守ってしているのです。欧米の目に、踏み込みの足りないアマチュアの作品に映ります。

逆にかばわずに描かれた絵は、踏み込んだ本物の仕事に映るらしい。ピカソの絵はアトリエに無造作に置かれ、端に泥がかかっていても無頓着だった逸話がありました。欧米はワイルドでダーティーな絵を求め、日本はセンシティブでクリーンな絵を差し出す構図。

これは、日本で芸術の意味が間違って認識されているせいと思われます。一点の曇りもない純粋物質を至高の芸とみなす誤解が、共通認識にある疑いです。美術の美を、美品的な清潔感に重ねた勘違い。若い世代までが染まりつつあるのは心配です。
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|02-17|作家方針の工夫||TOP↑
今回グラミー賞の小澤征爾は、アメリカのボストン交響楽団のイメージが強いのですが、ドイツのベルリンフィルを振った録音に、プロコフィエフの全交響曲がありました。

世界のオーケストラは、ウィーンフィルとベルリンフィルが双璧とされ、音の傾向も対照的と言われてきました。ウィーンフィルは弦のつやが優雅で、「ワォーン」という感じの和音の響きが持ち味です。ベルリンフィルは金管の推力で「ギャオーン」の響き。曲目によっては、区別がつきませんが。

小澤征爾のプロコフィエフ全集はそうした傾向に合っていて、どっしり感よりもガチャーンと輝かしく鳴る印象があります。突然あっけなく終わる第6番なども、閃光がまばゆいようなハードな演奏と録音バランス。

ドイツ製オーディオ製品は、ヘッドフォンのゼンハイザー社が日本でも人気です。が、スピーカーにカントンというメーカーがあり、その昔これが甲高いトーンに聞こえるせいで、ドイツで好まれる音質だとする一般説がありました。甲高いトーンだからカントン。湿って重厚なイギリスや、明るく前に押し出すアメリカの音とは全く違って。

こうした国を代表するオーディオ製品の音質が、国民性とどうつながるかは謎です。ドイツの美術分野でも、カン高い画調の絵が人気かといえばそうでもなく、五感ともに共通する好みは特にないようです。
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|02-16|芸術の秘密と謎||TOP↑
今日の日本はまた寒波。チョコレートをお送りくださった方は、ありがとうございます。本部ドイツに送りたいほどです。まだ1月気分でしたが、どんどん春に向かっています。

思い出したのですが、ベルリンでの出展でアートアクセサリーとして、和菓子アートを出したいという方がいました。お菓子の美術を形にする前に時間切れで、他国へ移られ消滅しましたが。

そこで出した話は、どんなにおもしろいアイデアでも、実際にエンタメや教養の品として成り立たせるまでに、ある法則がある点でした。たとえば、自信に満ちた新案は最初は必ず失敗します。まずは初回に敗れるのがお約束です。プロジェクトXの世界。

だから敗れても去らない、敗れ去らないことが大事で、継続しないと完成も熟成もない。今回のフェスティバルで売れた方も、積み重ねて届いた微妙な部分が大きいわけで、そうだと発見した声も届きます。作り方が見えてきたと。初心者が一度の結果で、悲観したり腐ることは禁物でしょう。

今回1点以上売れた方は30名超ですが、初心者からベストセラーは出ていません。一人の世界に埋没し作り込んでも、先は開けない法則もあるようです。縁故のない、文化の違うドイツ美術市場なのだから。

頭の中に輝く素晴らしい美術が、具現化の段で凡俗化し、素人芸や学生の乗りに向かわないよう、こちらから意見することもあるでしょう。
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|02-15|ミニマム個展物語||TOP↑
ネットで仲間をつくれるSNS。日本での主流は、パソコン通信フォーラム、投稿掲示板、Mixi、Twitter、Facebookなどと変遷しています。美術家で、SNSの輪で自信をつけ、支持基盤の大きさで大物然とするケースも。

しかし一般にSNSの意見は片寄ります。ソーシャルな関係を保つために色もつくし。「よくある平凡な作品ですね」とは言わず、「とても心温まります」「最高に好きです」と言ってくれる。作品へのダメ出しを荒らしとして排除すれば、へたすると教祖様の立場にもなるでしょう。

ドイツで大ヒットが決まっているかのような雰囲気の方が過去にいましたが、もしかしてSNSが根拠だったのかも。「支持者が」という言い方があったような。確かに向こうは日本よりキャパシティーは大きく、買う心の準備があります。が、個別の作風をこれから試すところで「自分は絶対」では、結果にショックを受けたり落ち込む元です。

売れる常連は、国際アート都市のタフな商戦とは、距離の取り方も違うようです。ひとつは、作品内容と値段のバランス感覚でしょう。バランス。日本の号いくらの目安は通用しないのが普通です。

日本の現代美術観は、「芸術は自由」の意味を、素人芸や学生の乗りで考えがちです。だから特異性が不足して平凡になりがち。パリやロンドン、ミラノ、モスクワ、NY、ロスからやって来た作品と比較される前提で、価格相応の価値を見せることが大事でしょう。仲間内の優しい称賛は、目測を誤まる元になるでしょう。
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|02-14|作家方針の工夫||TOP↑
海外美術展に何度も参加した方は、会場の写真が手に入りにくい現実を知っているはず。オーストラリアやカナダも含めた欧米展で、主催者が配布する写真は少ない。少しでも送ってくれたら良心的な団体でしょう。

通常のイベントは、写真が豊富に欲しい人は直接行ってねというスタンスです。そして会場へ行ってみると、撮影禁止の張り紙があります。我々も2016のフェスティバルは、スタッフ登録したベテランによる撮影でした。

作家サイトの制作で、実績写真がなくて困ることがあります。たった一枚だけが手元に残っていたりして。ここで受注したサイトでも、実績ページを埋めるのはここで配布した会場写真が主だったりします。そして、日本国内展の会場写真もほとんどないというありさま。これが現実です。

かつて募集手配だけの頃、ベルリンのフェアで400枚以上、ニューヨークのフェアで500枚以上を参加者全員に配りました。いずれもこちらがデスクとなり、事前に撮影計画を立てました。こちらにプロ写真家がいるからできるわけで。あの時はフルサイズコンデジで、今回は一眼レフを使いました。

「たいした写真じゃないね」はビギナー感覚で、後に間違いなく心変わりします。年月たてば世の現実を知り、その写真を頼るはず。わずか一枚の写真で違うのが、サイト制作の現場です。だから昔の参加者からも、「あの展覧会の写真が残っていれば」と問い合わせがあります。当初はどうでもいい写真と感じても、あって助かったーと喜ぶ時がずっと後に来ます。

3.11以降、警察、消防、自衛隊、ボランティアが回収した写真がデジタル化され、最近になって現物写真の廃棄が始まりました。まだしばらく現物を捨てないでいる自治体もあります。命の次に大事なのは意外にも写真かもという、人生経験と人心の理解が、これらの熱意になっています。
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|02-13|写真とカメラの話題||TOP↑
道路にあるマンホールのふたは、なぜ丸い形なのか。理由はマンホールが丸いからです。

土木設計の基本ですが、地表近くでも土圧は非常に大きいので、人が降りる通路となるマンホール本体は、角パイプ状だと周囲からの土圧でつぶれやすい。だから当たり前のように、マンホール自体は丸パイプ状のコンクリート製ヒューム管です。

丸パイプ状の最上部に鉄製のふたをつける時、わざわざふただけ四角形だと不都合で、ジョイント部もデザイン困難です。ディテールの収まりから、当たり前のようにふたも丸く作るわけで、丸以外のふたを設計したらどうかしているでしょう。

ところで、クイズ番組や雑誌のなぞなぞコーナーでは、マンホールのふたが丸い理由は、ふたが中に落下しないからという正解が出回っています。その説明に、多くがなるほどと納得します。

しかしこれは、人が飛行機に乗る理由は、窓から見る景色がきれいだからという解答に似ています。副次的な利点としてそれもあるにせよ、主目的はそれじゃない。こうした正解を装ったデマを、人はなぜ信じやすいのか。

いや、その究明は後にして、「マンホールのふたが丸い謎」を、「抽象美術がその形態になった謎」に重ねると、ちょっとおもしろいような。抽象美術は主目的と副次的な利点がごちゃ混ぜで、造形が成り立っています。何が理由でその形なのか、作者にも不明だからデマの出番となります。
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|02-12|芸術の秘密と謎||TOP↑
Japan Festival Berlin 2016のブランド絵はがきで、販売数ランキングが出ました。偶然なのか、EU国の今の気分なのか、何となく白系が目立った感じ。どちらかといえば、ダークで重厚な図案が自慢のコレクションですが。

1位2位はしかし想像どおり。他国で製品化済みの図案もあって、実績もあります。3位はおなじみの累計トップ。またシンプルな7位が健闘しました。黒々と気合いの線画ながらタテヨコ比が合わなかったので、編集加工に手間をかけた一枚です。

最近はマーケティング導入など、着手から方法を変えました。突飛だったり微妙な図案は1枚売れると盛り上がって、コレクションの本領を感じさせます。場所で潮目も変わり、ベルリンのギャラリー売上を足すと順位も変わるから、多少はなんちゃってランキングです。

ブランド絵はがき
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美術を、コミュニケーションツールとみる着想があります。概念を伝える機能に注目し、情報伝達や情報工学など学問の対象にもできそうだし。そして鑑賞側は、この部分で間違いを犯しやすいのです。

というのも、ある絵が伝えたいことが喜びか悲しみかさえ、実はわからないからです。伝達内容をクイズと見立て答えても、永久に検証不能でしょう。そこから結論として出てくる「正解は作者のみ知る」という一般説は、さらなる間違いです。

たとえばムンクの『叫び』は、精神疾患の症状たる幻聴への耳ふさぎなのに、手をメガホンにして叫んだ絵と受け取るのが一般的です。作者と鑑賞者は、根本的にすれ違っています。ただしこのすれ違いを、「芸術を誤解した」とは言いません。普通は言わないという統計的な結果ではなく、そこを誤解と言ったらまずいという意味です。

「誤解した」とは、作品から伝言を読み取る時の間違ったアプローチを指します。これが誤解になる理由は、作品に託されたものは作者もよく知らないからです。『叫び』が精神を患った不安なのか、光明を得た超越感なのか、瞬間の心理は作者も記憶にありません。質問された作者が、そこで思いついて筋書きを後付けしたりして。

作者が込めていない意味を、鑑賞者が読み取るのに成功しても、さしたる意味もないでしょう。ただし創作の秘密はその部分にあります。妄想をかき立てる作品ほど、名作になる実態もそうでしょう。他人に伝わらない、渡さない部分に作品の真価があるという。
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|02-09|芸術の秘密と謎||TOP↑
日本の美術愛好家たちのブログに、本心がたくさん出ています。「主張が強い美術はちょっとね」「主張した作品は嫌い」と。「僕は主張している美術が好きです」と書いたアートブログは、おそらく皆無と思われます。愛好家の皆さんは、美術の主張が大嫌いなのです。

これがそのまま、日本から海外へ出るアートのハンデになります。簡単な話で、日本で愛され評価される美術を外国へ送っても、普通はスルーされる運命だから。欧米では主張なき作品を相手にするほど、美術に飢えていないという。

昨年の事例では、日本の美術大学がコピペや剽窃模写で売れっ子を生む教育を行っていたと、ずいぶん話題になりました。美術というカテゴリー全体を、前にも増して軽蔑する日本国民が増えたのは確かでしょう。美術大学は税金の無駄だから、学部学科を廃止せよとの声が増えたのも事実。

コピペや剽窃模写とは違うオリジナルを出す参加者が大半ですが、今度は主張の薄さでコケやすいのです。たとえば、思いを込めた美術は無意味です。思いを示した美術でないと足りません。何の変哲もないが、感情は詰め込んだという作品は、知らない他人には何の変哲もなく映るはず。

アーティストの自己採点もずれがち。主張になっている作品を引っ込めて、主張していない作品を自薦する傾向です。成果を引き寄せるには、間違った自己採点を修正する必要があります。創造は売れることが正義ではないものの、空気だったからだめでしたではまずい。芸術の意味が、日本だけ逆であることに注意がいります。
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|02-05|芸術の秘密と謎||TOP↑
ブラック企業は、失敗が社内で頻発するのが特徴です。誰か社員が「用事ができたので休みます」と、電話に出た者に告げたとします。その日の社内で、あいつがなぜ来ないのかと騒ぎになります。そんな失敗が、いちいち起きるのはなぜか。

ブラック企業は、サイコパスが運営する会社という定義がよく言われます。異常なトップから悪意が伝染し連鎖し、部下たちも感情的で意地が悪い。内部が元から険悪な雰囲気になっていて、互いに攻撃し合い、警戒し合う不和が全社に行き渡っています。

だから、知らせを聞いた社員は上司の今の機嫌を探るのです。上司の意地悪なリアクションを免れようと、伝言を告げるタイミングを慎重に選ぼうとするうちに、告げること自体を忘れてしまう。上からの懲罰を恐れ、知らない話だとウソをつく。

ホワイト企業では起きないこうした事故と水掛け論が、ブラック企業では来る日も来る日も、入れ替わり立ち替わり続きます。自称常識人の上司は、いっそう不機嫌になっていく毎日。

美術界そのものがブラック企業化していないかは、ひとつの注目点です。この件で何度かドイツ側の美術がどうなっているかを問い合わせても、いったい何の話なのかが伝わりませんでした。団体は不和や内部抗争がない方が発展すると、普通は考えるから当然でしょう。
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|02-03|ドイツ事情スケッチ||TOP↑
「貧すれば鈍する」のことわざは、古代中国にもありました。欧米にもあるでしょう。金に困った者が、汚れた人格へ落ちていく法則とされます。

芸術を語る場で日本の不況の話題が多いのは、文化交流にも国の貧困が影を落とすからです。日本が貧しくなった原因は正味ひとつで、団体戦と互助に長けた国民向きだった一億総中流システムを捨て、格差社会に変えたことです。

「株主に最大の利益を」と訴え、グローバルスタンダードや新自由主義の語が新鮮だった当時。結果生じた貧の例が、児童の6人に1人が食べるに窮する現状です。給食と弁当を入れ替えて逃げる問題とは違うわけで。

貧と鈍が今なお深まっていく理由も簡単で、搾取する側が今なお政界に詰めているから。景気対策はやる前から成果なしが約束され、議員も芝居じみた貢献を自覚し脱力状態。利害関係者が原因を伏せようとした一例が、国民が子を生まないせいで不況になったという偽りの説明でしょう。

ネットのアングラで、この流れを変えてくれそうな二つの外力がささやかれます。ひとつは日本が他国と新たに戦争する日。もうひとつは富士の噴火による首都壊滅願望。震災では曲がり角が来なかった絶望の次に来る、刹那気分の自暴自棄に警戒がいるでしょう。鈍した路上テロだけでなく。
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