最近新しいパイロット企画をスタートさせました。これまでのマネージ・アンド・プロデュースそのままの、アーティスト売り込み契約です。簡単にいえば、音楽プロデュースと近似した作業で、アーティストの作品強化を図って売り出すものです。売らないと一円にもならない企画。

ドイツの人たちが日本から来た美術を見る目は、毎年進化しています。日本からのアート作品が集まり始めた当初は、知られざる日本現代美術への好奇心が先行しました。「何だ、何だ?」と見て確かめたかった。

しかし現代アートの一般化を済ませているヨーロッパとあれば、作品を買う話にすぐなります。コレクターアイテムの価値に着眼が移り選別が進む中、買えない作品は隅に置かれ始めました。当然こちらの企画も、参加者との作戦打ち合わせが増えています。出したいものを出すだけでは遅い。

買えない作品の代表は、サイズにくらべて高額なものです。さらに、買う視点に立つとアイデアのおもしろさでは足りず、ある種の完成度が決め手になります。100点満点で88点の作品だと称賛されど買われないのは、各国のアートが豊富に集まっている地だからです。

88点を96点に上げるプラス8点の増強を図る、アート・マネージメント・システムを考えました。作者の理念やコンセプトを整理し、作風を補強して、原案も出すなどしてボーダーラインを超え、作家ブランドを確立させます。

この方法の動機は、音楽では何人もが協力し合って互いを伸ばすのに、美術にはそれが全くない差でした。作者が歳をとっても、広がりが出ない。音楽には95点の曲が多いのに、美術では79点あたりの低迷が多い。ひとりで走って発案し、作詞、作曲、伴奏、歌唱しても限界がある人間の特性をみて、美術でも同様の協業システムをつくろうというわけです。
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|06-24|作家方針の工夫||TOP↑
日本の美術界の特徴的な構造は、「伝統具象」と「現代抽象」の並立です。「伝統的な具象画壇」と、「現代アート界」に大きく二分されています。思想も尺度も人脈もショップも、何もかもが異なる別世界へと離反。地方美術館のもめごとも多く、現代アートの仕掛け人がクビになったあの事件もそう。

しかしドイツでは、そういう分かれ方は特にないようです。日本でなら現代美術展とタイトルをつける行事も、ドイツでは単に美術展です。ドイツで新作展は全て現代美術なので、あえてそう呼ぶ必要もないから。日本の会社求人案内に、「現代人求む」と書かないのと同じこと。

つまり日本で現代美術は特殊化しています。一般の新作美術とは別枠に分けられています。一般の新作美術とは、印象派や野獣派の延長にある近代具象画壇と、地域の油絵グループやスケッチデッサン画サークルなど、おなじみの社交場です。

日本のそのゾーンを現代美術と呼ぶと何だか調和せず、昭和歌謡をロックと呼ぶ感覚に近いでしょう。日本の現代美術は現代音楽や現代バレエと同じで、理解しがたい意味も込めて呼ばれます。これが特殊化。「僕は現代美術を作っています」と自己紹介すれば、変な人に思われそうな社会。

「ドイツで美術展をやります」と呼びかけると、カテゴリーのミスマッチを心配する質問者がやはり現れます。国際的な場の現代アート展に、自分のような古来の具象画は参加資格があるのかという不安が、今も残っていて。

ドイツでは全てが現代美術になるので、具象画壇の絵も区別されません。日本ではあまり見ない、派閥を超えた展示光景になります。伝統的な具象洋画は、ここでのプリントアート企画では、日本的なモチーフを選ぶことが増えます。縮小加工するとサブカル風味も帯び、見た目が日本画に近づくからか、現地でどちらかといえば売れる方です。
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|06-17|ドイツ事情スケッチ||TOP↑
節約とは物を買わないことなので、節約すると物が売れなくなります。節約イコール不景気。倹約やコストカットを続けるとGDPの萎縮も続き、国力衰退と地位低下も続きます。節約で経済アップはない話なのに、あると信じる勘違いが日本病の原因と先述しました。しかし、ただの勘違いでもなく。

おやつは「カール」の製造工場を減らし、東日本での発売中止が発表されました。そうなった理由の識者説明は、国民の味覚変化やとうもろこしの原価でした。しかしスポーツカーやゴルフ用品や本が売れない理由と同じで、原因は中下層の貧困です。おやつ代を節約して買い控えたから。

長くサブカル界で人気ダントツ一位の「少年ジャンプ」も、部数が大きく減っています。これも同じで、漫画誌に求める思想が時代変化したのではなく、貧乏で買い控えたから。漫画はなくても死なないよと。アートみたいに見るだけ、立ち読みするだけで買わないよと。

景気の悪さへ話を向かわせまいとした説明が、怪しい立場の存在をうかがわせる重要ポイントです。国民が一丸となって景気向上へ力を合わせているわけでもなくて、実は内部で綱引きが起きているのです。

今の日本では、上層が国内経済を悪くしたい願望を持ち、下層が良くしたい願望を持っています。概して経済団体は前者。前者に主導権があるうちは不況は維持され、現状はまだその路線です。記録的な好景気が今来ていると、実態と逆のアナウンスを行って、国民が放心した状態が今。

不況の雪解けのきざしは、2014年の年初でした。しかし、3カ月後の消費税上昇で消費はガク落ちして節約時代に帰り、また冬に戻りました。今から3年後の東京五輪の前評判が暗いのも、節約五輪コンセプトが1998年頃の緊縮財政と同じ考え方の、国力衰退ベクトルだからでしょう。
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|06-13|美術の基盤は経済||TOP↑
日本で売られる鶏肉はブラジル産が多く、輸出元の食品不正があって各国で禁輸となっていましたが、最近解けました。しかしそうなる前から、アメリカでは輸入禁止対象だそうです。アメリカが禁止するとは相当のもの。

危ない食品をあげていけば、食べるものがなくなると騒ぎが起きたのは、1960年代でした。語りぐさがあり、香り高いジュース類が無果汁だと雑誌『暮らしの手帖』が暴露したのがひとつの事件でした。

最近ニュースに多い小麦アレルギーとは別に、出回り始めた警告は野菜です。一昔前の日本では、野菜は健康に良く肉は悪いとされました。たぶん当時のチョコレートやピーナツと同じで、肉は値段が高かったから、買わない理由が後づけされた気がします。これもイソップのぶどう。

ところが1990年代に学者が「野菜には毒が多い」と生物学の基本を告げてから、近年は信じられ始めたのかも知れません。野菜の毒はジャガイモの芽やホウレンソウのアクが連想されますが、動物に食われないよう全般に毒素が多く、新しい話は年月経て悪影響する遅効性物質です。

健康食品でもある植物性オイルにも、長年かけて脳障害を起こす物騒な説が出ています。日本に菜食主義が流行らないのは、もはや輸入肉が安価で地場野菜が高価になった逆転もありますが、確率的なリスク分散を図る合理性もある気がします。賭けをしない身の振りというか。どの馬にも賭けておくローリスク・ローリターン。

時代が変われば名作と駄作が交代するのは美術ですが、その変化はスローです。一方でコーヒーやコレステロールの評価変更の早さを思えば、美術はむしろ逆に価値が長続きするたとえに使えそうなほど。
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|06-11|その他||TOP↑
ビットコインの大半を中国ユーザーが持つのは、人民元を円やドルに交換したり国外へ持ち出す制限をかいくぐる目的です。日本のショップは、そうした脱出資金での爆買いに応じる目的で、ビットコイン決済へと踏み切り始めています。

数百~二千種もある仮想通貨のひとつであるビットコインは、実は通貨でなく決済手段だとの指摘もあります。人民元に限らず日本からの円持ち出しも、外国為替法があり自由ではありません。空港からの現金も百万円以上は届け出制の上に、内部的な自主報告は十万円あたりから。

電子マネーもタックスヘイブン活用金融商品以外では、少額送付さえマイナンバーカードで顔写真を届け、月何万円までと上限もあります。日本とドイツの送金コストも、為替手続き部分にかかる二項目がかさみ変動もあって手がかかります。

しかも、年々不自由になっています。過去に海外送金できた銀行カードも、今はほぼ廃止。理由は欧米からの国際テロ対策要請で、日本からの資金移動抑制とマネーロンダリング防止です。

ビットコインの全体像はいわば同人の集いですが、もし米欧日ユーザーがメインで使うと、送金手数料を主な収入源とする日本の銀行は、解散になるでしょう。それで銀行幹部は勉強会を開いて、ビットコインの代わりになる本命システムを計画する準備を始めています。

ビットコインもまた、欲しい人が多いほど資産価値が高まります。昔の貝殻やチューリップ球根と同じ。その点はアートも似ていますが、値上げ目的の購入呼びかけは意外にやらないものです。無名画家を買った者が世に宣伝して、資産価値をかさ上げする発想があってよいはずなのに。
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|06-07|美術の基盤は経済||TOP↑
デュッセルドルフ市の「ジャパン・デー」(ドイツ語=ヤーパン・ターク)は、ジャパン・フェスティバル・ベルリンより前からあったそうで、最近参加者から知らせてもらいました。今年2017年は5月20日開催でした。

ジャパン・デーの主な出し物は、コスプレと打ち上げ花火だそうです。百万人集まる花火が目立って、観客からみて屋内会場の規模バランスに課題があり、人混みになりすぎて行きたくてもしんどい声も多いそうな。

手頃な見本市であるジャパン・フェスティバルよりも市民祭化し、舞台アトラクション以外の出店はバリエーションが足りない悩みがあるそうです。アート出展エントリーの呼びかけが日本に来ていますが、日本から出展しにくい理由は景気の内外差です。

日本だけが25年目のデフレ不況で一貫し、美術家が撤退と廃業する不安が続いて、もう活動停止しているケースもみられます。そのため日本から出品するモチベーションは、投資よりも資金回収する意識に向かいがち。ベルリンから離れるほど、参加費が上がる悩みも効いてきます。

ちなみに、ジャパン・フェスティバル・ベルリン企画ではフェア参加の考え方を変え、見せ作品から売る作品へ、作品集合から作家育成へと趣向を変えています。日本美術販売プロギャラリー的なやり方は、仮にジャパン・デーに拡大しても続けることにします。

ジャパン・フェスティバル・ベルリンでは、たまに作品販売で黒字化して参加費を取り返す強豪が現れましたが、ジャパン・デーでは一日限りなので、むしろ作家宣伝に投資する方向が強まる気がします。よその市なので事情がわからず、情報を集めています。
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|06-04|ドイツ事情スケッチ||TOP↑

日本現代美術をドイツへ

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