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2019/07/01

JFBのジクレー用紙のマッチング改良

ジャパン・フェスティバル・ベルリン2020の出展のめどが立ち、ジクレー版画と大型絵はがきの作品募集を始めています。アシスタント・ディレクターが伝統芸術系の新人なので、新たな可能性を感じています。

2014年の絵はがき企画スタート時は、印刷見本を早めに受け取ることができ、画面で見る絵と印刷結果との差異を小さくできていました。一方2015年からのジクレー版画は、作品が大きいので見本はなかなか入手できず、当面ヤマカンでの手探りでした。

ドイツで使われるアートプリンターは日本製で、こちらも大型インクプリンターを管理していた時代もあり、再現具合を予想はできました。メーカーごとのクセはあります。ただし、光沢紙と半光沢紙しか使ったことがありませんでした。

キャンバス目や水彩紙などテクスチャーのある厚い美術紙は、日本ではプレミアム扱いの高級品なので、見本の画像で想像するのみでした。後で一部を日本へ送ってもらい、おおむねうまい画調で刷られていたと確認できました。

しかし用紙にもクセがあり、暗い絵のディテールが埋もれやすい紙もありました。その作品は早く売れていたのですが、特性がわかったので原画の質感重視で改善します。売れればよいというだけではないし。

絵がシンプルだと、テクスチャーのある用紙でにぎやかにします。ドイツのファインアートにも写真光沢紙がありますが、写真用ながらテクスチャーがあったりします。廉価なカットペーパーの光沢紙よりは、経年耐久性が高いのでしょう。
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2019/06/24

ジクレー展と絵はがき展JFB出展の募集開始

ジャパン・フェスティバル・ベルリン2020の日本新作美術展、5回目を募集開始しました。スペースは前回のコンパクトより広がります。新たに作家資料づくりで、マイクロポスター化を考えています。作品リストは毎回手間がかかっています。

現地の物価を時々調べていますが、デフレ日本以外の国は普通にインフレ基調なので、各種料金が高度成長時代の日本みたいに年々上がります。郵便料金や国際便、宅配やあらゆる入場料も上がっています。ジャパン・フェスティバルのエントリー料もかなり上がりました。

今の日本も物価は上がっていますが、これは増税で強制される総額アップと、物が売れないから採算悪化で値上げした、デフレ下のスタグフレーションであり、所得は下がり物価が上がる現象です。不景気下の採算割れ対策の例が、ヤマト便の値上げでした。

日本国内だけみれば、右肩下がりの斜陽が永続しそうな暗い気分ですが、世界各国は人口減でも少子化でも経済成長しています。経済は国民の覇気や能力ではなく、政策のさじ加減しだいです。具体的には所得分配率と政府財政出動です。所得移転を続けるレントシーキングを止める動きは、日本にはまだない周回遅れ。

一人負け日本の落ち込みは国際的な発言力低下にもなり、こうした海外イベントへの出資と出番の減少もあります。今回もへたすれば日本からの遠征が全滅し、現地だけで回るかもという不安がありました。脱落せずに踏ん張ります。

今回ジクレーの編集と用紙選択を少し見直します。絵はがきは全デザインが手元にそろっていますが、ジクレーは一部をチェック用に取り寄せただけでした。美術紙のテクスチャーと絵とのマッチングも改良します。
2019/05/01

ジャパン・フェスティバル・ベルリン2020の準備中

令和二年に東京五輪の前に開催される、ジャパン・フェスティバル・ベルリン2020の下準備中です。会場担当ガイドさんを決めるところです。チームづくりで、ボランティアも買って出ていただけました。少数精鋭展の可能性も視野にあります。

前のジャパン・フェスティバル・ベルリン2019の会場は、雰囲気が従来と少し変わりました。大口出展が入れ替わり、ピュアアートのボリュームが小さくなったせいでしょう。ジャンルが混在したこともあり、他の階と似てしまいました。

展示会は、もちろん展示物でガラッと変わります。もしピュアアートの出品が消えると、ゾーンごとなくなる理屈です。仮に地元の幼稚園児の絵が加われば、やっぱりその方向に瞬時に染まるものです。展示物のタレント性が場を支配します。

日本の90年代のファッションビルには、どこかの階にアート販売店がありました。歴史名画のポスターとかオリジナル版画とか、ポストカード類を置いていました。しかしある日通ると、靴下店に変わっていたりしたものです。デフレ不況だから。ビルの印象まで変わった気がしたものです。

ところで、なかなか場所が決まらないベルリン少数精鋭展の続きですが、早く再開したいと考えています。これはEUが発端の世界同時デフレでプロギャラリーが低調で、代わりになんちゃってギャラリーが台頭した、欧米の事情が関係します。

平成の最後に、アメリカからおもしろ貨幣理論が登場し、あまりに現実どおりなので守旧派との攻防が起きています。その理論では、日本は簡単に経済発展できる道理です。今の正反対をインフレターゲット内で続けるだけ。ところがEUは原理上共食い構造なので、日本と同じだけ有利なのは、先行したアメリカ以外はイギリス、カナダ、スイス、オーストラリアだけだそう。
2018/12/12

デジタル版画の編集作業は時間の余裕があると有利

ラブレターを書いて直面するのは、翌日になって自分で読むとひどい内容だというショック。これはしかし電子メールでもそうだし、また論説記事やライトノベルの執筆も同様です。文章はなぜ一発で完ぺきにならないのか、という疑問です。

執筆時の思いは片寄っていて、後日読むと「こりゃだめだ」となります。Yahooなどに出るネット記事を読むと、内容がつかめない文や誤解を招く表現など、突っ込みどころが多くあります。概してまとまりが悪く間違いも多い。

これは一記事が800~1500円というジャンク価格で外注されているからで、見直し時間をとらない前提だから駄文の域から出ない典型例です。十倍に値上げしないと改善はありません。同じことが美術作品にもいえます。

たとえばピカソは生涯に絵だけでも13000枚も描き、非常にハイペースな作業でした。ところが過去の絵にちょこちょこ加筆していたから、即席仕事でもなかったのです。ネット記事の執筆者も半年後に推敲すればよくなりますが、ピカソはそれを絵画でやっていました。

これはジクレーの版下編集でもいえるでしょう。夏のうちにあっという間に完成していた版は、展示会までの残り時間に見直す機会があるから、何カ月もかけたのと同じように念入りになります。改良の余地がほとんどない状態にできます。

見直しの最極端は手塚治虫の漫画でした。旧作を別の漫画雑誌に転載するたびに、セリフを変えたりストーリーまで加えたり抜いたりしました。バリエーションは増えたけれど、作者にとっての完全版がどれなのか今も確定できず、初連載誌だけに残された幻の物語もあるらしく。その手もあった。
2018/12/05

ジクレー版画づくりの撮影作業は簡単なようで難しい?

毎年12月は、ジクレー版画と絵はがき作りの作業が混みます。その作業工程の中で意外にネックになるのは、作品の撮影です。写真スタジオやジクレー工房へ外注せずに、参加者自身が撮影するには多少の技術知識もいるからです。

ストックした作品画像を使おうとすると、画素数が小さいから撮り直したい場合があります。それなら、カメラの世代交代が進んで自作品のストック画像の情報量が時代遅れになれば、時々撮り直して更新しておくのも手です。

セルフで撮り直す時の悩みがあります。今の時代は全自動カメラが一般的なので、写真撮影の理論を調べ直すべき必要も出てくるからです。絵画撮影は全自動の恩恵対象に入らず、マニュアル撮影が必須だから。

SNSで見映えするスナップショットではなく、純粋に商品撮影(ブツ撮り)の知識が必要で、ISO感度、絞りとシャッター速度の相反則に、回折や収差の原理、色温度、照度など、物理学も動員されるものです。カメラ小僧やカメラ女子なら楽勝でも、活字にすると長い説明になります。

写真家やCG画家は画素数を常に念頭に置き、作品が引き伸ばせるサイズ限界に見当をつけていることでしょう。しかし今や、手描き画家もCG同様に商品化できる時代で、一度は写真の講習を受けるのもよいかも知れません。

こちらのサイト制作ワークショップでは、絵画撮影ガイダンスも用意しています。所持カメラの活用法や、新型カメラの選定から始まります。本格カメラはほぼ日本製の一択なので、ドイツより日本で買う方が安く、また日本だと中古カメラの店が多く、キットレンズなどは市場に余っています。
2018/05/21

美術印刷とネットサイトのカラーマネージメントを再び研究

ジクレー版画と絵はがきとでは出力手順が大きく異なり、しかも印刷所ごとに入力原稿仕様が厳格に決まっています。ドイツの印刷所を使う時は、資料を取り寄せドイツ語を調べる必要もあります。

ところがいくら厳格でも、OSや各機器ドライバーソフトのクセもあり、データどおりの再現は不確定です。個別事情でさじ加減も必要だから、雑誌社も印刷所の特定職員と連携することが増えます。

カラーマネージメントのネット情報を読むと、非常に難解です。一枚の画像データにカラープロファイルが一個必ずついて、相互に変換可能というだけの仕組みなら理想です。ところが現実は、消したり他を名乗ったりも可能で、画像ソフトの設定とファイル操作は難しく、トラブルが絶えません。

ネットの人物写真が赤ら顔だったり、逆に生気がなかったりは、カラープロファイルの不一致でよく起きます。画像ソフトで保存時にカラープロファイルなしが選べたり、なしにするテクニックもあるせいで、後にミス選択が起きるわけです。当面PNGデータにはつけるなという意見も、困りものです。

一般にプロのデジタルカメラは、カラープロファイルが印刷出版向けに設定されます。同じRGBデータでも色空間が大きいので、画像の内部数字は異なります。主流の色空間が少なくとも二種類あるから、どの種かを宣言するカラープロファイルを消せること自体、発想がおかしいわけです。

消されていたらブラウザソフトが博打的に決め、外れたら二度濃くして赤ら顔や、二度薄めれば生気なしが起きます。対策として、絵画の画像でも撮影時のカラープロファイルを必ず埋め込みます。大量の原本画像がカラープロファイルなしなら、メモ文書を添えるのが現実的でしょう。
2018/05/08

日本よりも版画に親しんでもらえるドイツ

日本で起きる美術の様々な現象には、やっぱりある種の事大主義が見え隠れします。版画の仕様の取り決めが細かいのも、この表れかも知れません。陶芸の箱書きと似た感じで、お墨付き書類で作品の値打ちを左右する意識が大きいという、程度問題があります。

こういう手続きを踏んだ版画は値打ちが高く、欠けたら値打ちが下がるという強い規則が、薄れつつも残っているのが日本です。何とかエディションという、グレードを示す規格に比較的深く執着する傾向です。

日本では鉛筆書きナンバーなしはエスタンプと呼び、格落ち扱いです。当のフランス語圏では、エスタンプは版画の意味で、そうピリピリしません。外国ではアートは自由という意識が優先し、便器を美術と呼ぶ時代に強い検問で制するのはアンバランスだし。日本は資格重視、外国は内容重視。

ドイツでも関心の対象は画のイメージ、図柄です。仕様の規格で値打ちを測っていないみたい。だからドイツで絵にサインを求められるのは、サインで値打ちが変わるからではなく、名前ぐらい書いてねという意味です。

もちろん出展するこちらは、手がきと誤認されないよう看板にジクレーと表示します。日本側ではフランス語のジクレーですが、外国で一般に通るのはアートプリントの語だと知りました。二つの語を明示しています。

ジクレー展では日本での値打ちも考え超高級紙に刷りますが、対外的にはオーバースペックかも。同じ絵を用紙のグレードを変えて刷り、相応の価格差にすると、安い方が売れる傾向があります。絵の資産価値よりもコンテンツイメージがお目当てで、リセールバリューは後回しらしいから。
2018/04/22

印刷物と版画とプリントの国際関係

国境を自由に越え、国境をなくして世界を均質化する主義がグローバリズム。それを国際社会に仕掛ける者は、持ち株会社や資産運用会社などマネーを商品とする企業が中心です。その理念のひとつが、英語への言語統一でした。英語以外を世界から消したい立場です。

しかし日本語は世界有数の広範なボキャブラリーを持つので、英語に移行すると表現範囲が減ります。たとえば、日本語の「君」と「あなた」は違う意味です。Jポップの歌詞でも、「ユー」だけだと光景や情感を表現しきれないから、歌の芸術性は狭まるでしょう。

そんな日本で生じた衝突に、「印刷物と版画は違う」があります。この区別は、わずか10年前でさえ日本版画界の悩みでした。英語だと印刷物も版画も「プリント」なので、二つは同一とわかるのですが。言語の国境が、アート業界の足を引っ張りました。

版画とは、印刷して量産した絵画のことです。英語でアートプリントと呼ぶから、プリンターで刷った紙とわかります。ところが日本だと、版画のプレス機と印刷の輪転機が、まさか同種の機材とはイメージしにくい。まして電動式で電子式でUSB接続となると、別世界に思えてしまいます。

そこで国内のジクレー販売店は「それは本物の美術か単なる印刷か、どっち?」の疑問に対して、「非常に美麗だから芸術的な価値がある」という説明をよく行いました。美しいから本物の美術なのだという論法に頼ったのです。原色が従来の倍に増えた、六色インクに救われたかたちで。

しかもそんな2008年頃でさえ、「印刷物が美術を名乗ったニセ絵画の商売をなくそう」と主張する糾弾サイトがありました。印刷物が美術を名乗った紙を、版画と呼んできた欧米の長い歴史に対して、日本語の豊富な単語が裏目に出たのでした。
2018/01/25

2日後に迫ったジャパン・フェスティバル・ベルリンの日程

あさって1月27日に始まるジャパン・フェスティバル・ベルリン2018のスタッフ用資料は、すでに現地へ送っていました。日本側としては待つだけです。

日程は、
2018年1月27日(土)10:00~20:00 (日本時間18:00~4:00)
2018年1月28日(日)10:00~18:00 (日本時間18:00~2:00)
日本時間は8時間先行します。

今回は前回のドイツ国側の盛況を受けて、恒例化を意識したものとなり、個々の作品をいっそう充実させる方向を狙いました。昨今は外国で日本アート歓迎ムードがあるとしても、物足りないまま売り抜けるのは避けたいからです。ただし日本は不況なので、登場メンバーは限られました。

今回の見どころは、まずジクレー版画。強豪の少数精鋭に近い状態です。4点の出品がいっそう増えています。単価を上げたい希望もあります。

ブランド絵はがきも新作はわずかにとどまり、途中で降りた方が多かったのです。絵はがきは100枚つくるから、誰も買わない前提では出しにくい事情もあります。そこはジクレーと違い、売れ数を伸ばしたいところで。

マイクロ個展は、アートアクセサリーの後継です。絵画作品にまで広げたので、4種類の作品群が並びます。海外の展覧会は見物よりも買い物なので、絵をテーブルや床に置いても成り立つので詰め込みました。お客様はちゃんと中味を見ていますので安心。
2018/01/03

作品を買う理由とジクレー版画の編集作業

24日後に展示するジクレー版画の多くは、すでにレイアウトデータをドイツ側へ送ってあり、遅れている分は引き続き編集中です。版下を並べると過去最高の品ぞろえに見え、少数精鋭的に総力が上昇した気はします。

原画を輸出し会場に置くやり方から微妙に変えたのは、売れた作品点数の割合が少なかったからです。一点も売れなかった展示でも、日本でなら見てもらえてよかったという喜びになります。が、外国では売買が文化交流の本意なので、購入数が皆無の展覧会は失敗です。

そこで、相手が買う気になる理由を持っている作品を集める発想に変えたわけです。買う理由が足りない作品があれば、買う動機となる何かを編集で足します。よくあるのは撮影時の綾を表現に加える微妙な世界で、トリミングしたりサインをカッコよくしたりもあります。

こうした作品改良は、欧米にもあるのか。たとえばアメリカのギャラリーは、取り扱い作家に意見や要望を細かくつけてくると、参加者から聞きました。貸ギャラリーと違い企画ギャラリーは美術商店なので、商品を向上する意見や注文がついて当然。えっ、アートを商品と呼んじゃっていいの?。

実はこの問題は根が深く、日本では見せてナンボ、他国では売ってナンボの差があります。売れるようにしますと言うと、売れなくていいから自分のやりたいとおりを希望と、日本特有の思想が根強いのです。ヒットは打てずとも、今のスイングフォームを続けるんだ式のバッターに似た心意気。

こうしたプロ否定傾向が合成された結果、日本に美術の一般市場が築かれなかったと考えられます。作る側に売るつもりがないと、買う文化ができない。それは一応ニワトリとタマゴですが、我々のジクレー版画は知らない他人様が買う理由を盛り込んでから、現地へ届ける考え方です。
(作品見本
2017/12/11

アート展示会の下準備でやることが増えている時代

大学で屋外彫刻をつくり、苦労して完成し市街地に運ぶ直前に、教官から突然言われました。「作品タイトルは何?」。考えもしませんでした。ひどくあわてたのですが、たまたま台風が来て外は強風だからそこから取り、後の芸能タレントグループと同名になり。

音楽分野で曲のタイトルに、その時に起きた事件をヒョイと題名にするのはよくあり、ビートルズ曲にもそうしたテキトーなタイトルがあります。問題は、美術展に向けて美術家がやっておくべき準備の多さです。

アーティスト名と作家サインを決めていないと、けっこうあわてます。日本ではサインは作品を汚すもので、絵の純粋さと清潔感を保つためにサインを省くか、しぶしぶ淡く小さく入れる傾向があります。しかし市民が価値を決める欧米文化では、署名なき状態は不利だという。

また作品が人手に渡ると、サイズや材質などの情報が永久にわからなくなります。サイトをつくる時に作品一覧をつくりますが、ネームがそろわず空欄ばかりになり格好がつかないことに。だから出品前に作品を計測します。

特に絵画は、撮影画像がないと悔恨となるでしょう。非常に精密な複製画がつくれるハイテクの時代になっているから、作者の存命中は版画の名で売るルールです。作品完成時の高画質な画像は生涯の収入源になり、展示会にも顔を出し続けられる利点です。昔はなかった今の特典です。

大学の彫刻では、教官からのもうひとつの質問に面食らいました。「作品の値段はいくら?」。考えもしませんでした。2人チームで組み上げた高さ3メートルの鉄製彫刻を、売る発想がこちらに全くなかったのです。この最初のつまずきは、後に日本国内によくみる問題だと知ります。
2017/12/07

ジャパン・フェスティバル・ベルリン用の作品編集が混み始め

この秋の寒波は例年の11月ではなく、12月に始まりました。ジクレーの版下づくりも混み始め、前年より遅れたピークになります。夏に準備した作品が今回はなく。毎度着手を早めたい理由は、時間を多く当てた作品はやはり相応に練られるから。

ドイツ側でフェスティバル主催者の宣伝が始まり、アーティスト資料は例年ジクレー版画の中から送っています。ただ、決定した作品はまだ少しだけ。

版画系の募集は今の時流に話が広がりますが、前回も啓発の苦心がありました。ジクレーは何でも版画にできて便利だとしても、複製作品への抵抗は国内にまだ残るからです。日本画より洋画に多いジクレーへの敬遠があります。

原画は本物で複製は偽物だと何となく感じるのは、比較的新しい感覚でしょう。近世の画家たちの方がむしろ、複製作品に寛容でした。多色インクプリンターが発売された1997年から、日本では印刷美術の是非論が起きました。

では現代のアート市場の反応はどうか。意外にも撮影画像にデジタルで描き足すタイプの作品が、ドイツで売れゆきがよいのです。もしかすると美術作品が複製物に入れ替わる流れが、ごくゆっくりでも起きているのかも。

原画は下絵にとどめ、プリント画で完成させる方法だと、絵を写真のごとく何度も市場に出せるメリットがあります。原画を手放しても資産が残る時代の特権でしょう。そこが大事な理由は、一人の最高傑作は比較的若い頃に出るせいもあります。撮影画像が命綱で、作者が持っている限り特権として再発売できます。
2017/11/16

個展の前準備にもなる手頃な団体展

参加希望者にたまにみるのが、「ドイツでの個展を望み、それ以外は不要」という初心です。一発勝負にかける気概らしく。ところが結果的にこちらで個展や二人展をセットするのは、団体展参加者の中からです。なぜそういう結果になるのか。

これは現地がついて来る下地づくりと、作者がついて行く下地づくりです。日本でも個展は、6日間で10万円は最低限。ドイツだと2~4週間でもっと高いから、的を外すとダメージが大きい。個展の初日にお客たちが「これは違うなあ」と感じたら、互いに損です。どうせなら的に当てたい。

そこで助走がてらマーケティングリサーチというわけで、低廉な団体展で事前調査し、方向性を決めて個展の設計に入るのが得策で近道です。この慎重さは、現代アートの時代性とも関係があります。それは、一人の作者が多品種になっている現実です。

一人で、具象画、抽象画、写真、オブジェとマルチに手がけるのは、現代日本ではよくあること。いかにも現代らしいのは、各々に一貫した作風がなく別人のごとき作風になりやすい点です。世に出回る作品に感化されてしまうから。情報過多の時代に、世に出回る作品に感化されるのは避けられません。

一人展で雑多に並べると何屋さんかが焦点を結ばず、現地の関心は薄れると予想されます。かといってヤマカンで選べば、外れる確率も高い。現地でイケるイケないを事前にチェックした方が、よいペースを保てることでしょう。一発シンデレラはもう起きないし。

ジクレー展でめぼしい作品を顔見せして、感触を確かめるのは無駄になりません。だからなのか、当初はベスト作を推奨していたのですが、今は新作や試作の出品が多くなっています。原画が温存され消耗しない利点もあるし。
2017/10/19

ジクレー版画展の参加資格は制約なし

今でもたまに誤解があるのが、ジクレー版画展の参加資格です。ジクレー版画の本を読んで勉強したり、ジクレー版画セットを買って彫刻刀で彫るとか、版画家になる訓練をイメージしているケースがありました。

実際にやる作業は、作品を写真撮影するだけ。調達が必要なのは版画づくりキットではなく、デジタルカメラです。版画業界で版画に定義されているジクレーなる技法は、厳密には技法ではありません。表現法と言っても、何か違う。

人によってやることが違うからです。ある人は油彩画だし、アクリルや水彩画かも知れないし。クレヨンや鉛筆も当然あります。さらに、風景を撮った画像をジクレー化してもよいわけです。間に絵をはさまなくても。

それは写真作品と呼びます。写真引き伸ばし機(エンラージャー)を使った従来の暗室作業は、後にミニラボに替わり、写真引伸プリンターかジクレープリンターに替わりました。シャッターを押せばジクレーにできるから、人類全員が訓練なしにジクレー作家になれる理屈です。

ジクレーの条件はインク吹付プリンター出力なので、レーザープリンターで印刷するとレーザー版画と呼ぶべきでしょう。90年代に日本で大売れしたアメリカの版画に、輪転機で印刷したオフセット版画がありました。これは虫眼鏡で見ると網目になっていて、簡単に判別できます。

ジクレーの利点は、原画を売った後に版画で再販できることでしょう。昔はデジカメがなかったから、自分のヒット作を手で模写して、木版画に彫り直して量産しました。そうして再発売を目指した実例に、ムンクの『叫び』がありました。
2017/09/11

ジクレーが一般化して起きつつある絵画の変化

ジクレーはアート制作の技法というより、仕上げの仕様です。できた作品は版画。たとえばムンクの『叫び』は何枚も存在します。作者は油絵を目視で版画に彫り直し、刷って量産しました。その目をカメラに替えて、インクジェットプリンターで刷ればジクレーになります。

ジクレー化で芸術性は失われません。ディテールのニュアンスは当初は失われましたが、ハイテクの力でもう水彩画はジクレーと見分けられず、専門家の鑑定が必要です。油絵なら、触れたりにおいでわかりますが。

立体造形をカメラワークで演出した不思議な版画もつくれ、『叫び』の頃より自由度が高まりました。しかしジクレーの積極的活用とは別の面で、全ての絵画作品が影響を受けています。一枚の絵にかけるエネルギーが上がる傾向です。上げざるを得ないというか。

逆に、簡素な略画や消化作品は値打ちが下がっています。というのは、絵を一枚かいて売ったらそれで終わりではないからです。撮影画像を使ってジクレー化して、もう一度売れるから。二度でも三度でも百度でも。まるで、打ち出の小づち。

イメージの著作権は作者にあるから、極論すれば生涯に一枚だけに全力投球して傑作をつくれば、生涯何枚も売り続けられる理屈になりました。一枚に力を注ぎすぎないよう労力を配分すべしという、従来の力学がなくなります。

音楽で一つのヒット曲を何度でも歌って千回でもコンサートが組める、それと似た立場に美術も近づきました。版画家に限らず、画家と名のつく全員が。広く浅く多作するよりも、一点をディープに作る作戦も考えられます。『叫び』だけを増産する手が取れる時代なのです。
2017/05/31

ドイツでジクレーアートは売れるとわかっていた

日本からドイツへ作品を送って、売れ方を調べて研究していました。比較的早くわかったことは、売れる作品の第一は写真だという点。日本にくらべてヨーロッパでは写真アートの地位が高いとは想像していましたが、真っ先に売れるのは印画紙の作品だったのです。

写真系が売れ、フォトエフェクト系やCG系のジクレーから売れていくこともわかりました。キャンバス画やパネル作品はあまり動かない、その理由は値段に大差があったからだと、すぐにはわかりませんでしたが。

日本は20年以上不況が続いて感覚が鈍っていますが、世界同時不況が聞こえ始めると、ペーパーアートのみのアートフェアがドイツで伸び始めていました。イギリスがEUオブザーバー脱退を言い出したり、移民難民問題が日本のニュースになるより以前の話です。

新企画も現地に合わせることを考え、日本のペーパーアート作品をファイリングした展示販売も試しました。すると売れたのは、手刷り版画とCGとやはり写真系でした。複写ものが強い。それなら全作品を最初からジクレーにして、もう一度ファイリングすればいけると考えたのです。

日本では美術は特殊化し、ゴージャスやプレミアムが求められます。しかし美術が一般化済みの諸外国では作品の価値は造形イメージであり、ソフト重視です。データ化する意味ではなく、コンテンツ本意の意味です。手で持つと重い必要もなく、ペラ紙の作品から売れていく欧州です。

ドイツで求められる本物志向は、作品の物理的な高級感よりも内容だとわかりました。ただ、ペラ紙だと折れたり長持ちしないから、ハイエンドアートプリンターと超高級厚手用紙にしています。日本だとかなり高額になるタイプです。
2017/05/28

ジクレー版画展の準備は少なくて長い

募集中のジクレー版画企画では、参加者はジクレーを用意しません。国境を電子で越えドイツの工房で刷り、参加者はあまり労力を使わずに済みます。もちろん梱包や発送は不要。代わりに作品決めなどの準備に時間をかけます。たまたま余っている作品を出しちゃえという、その手の失敗はおさえられます。

ドイツ国内で使うジクレープリンターは日本製です。現地のジクレー工房はどこも「うちの機材は日本製」と宣伝します。カメラと似た状況ですが、最高品質の用紙はドイツ製で品種も多いようで、日本の紙ではないよう。さすがに画材の伝統的先進国だから。

工房の入稿仕様に合わせるため編集はこちらでやり、参加者は撮影するだけです。この分業で、別のメリットが目立ってきました。作品の完成度を上げる調整を加えられます。

編集調整で、一番多いのはサインです。サインはなくても売れますが、ある方がはるかに有利です。作品鑑賞向けに展示する日本と違い、作品購入向けのヨーロッパでは、資産価値の担保でサインは大事になります。最善を尽くすため、絵に収まりのよいサインを用意してもらいます。

次に多いのは、カメラ撮影した絵画のプリント範囲調整です。少しある裁断しろを計算に入れ、一歩前に出た絵を狙います。この時に撮影の救済が必要になります。一部切れているとか、傾いて写っている場合の補正。同時にピクセルのロンダリングも行います。

見るだけの展覧会ならどう作っても済みますが、買う展覧会ではトンデモな絵図であれ、買える範囲に入れる必要があります。会場の外でもアートが多く売られている市街だから、印象に残らないその他大勢作品に見えないように、編集で細工をこらすことがあります。
2017/05/24

版画で弾幕を張りながら流れをつくる作戦

作品の値段では、最初は一攫千金や一発で元を取ろうと力んだものでした。しかし10号絵画を、ドイツで希望価格3000ユーロ(36万円)とすればいけるか。日本の画廊でよくある価格ですが、ドイツでは新人の100号並みだから、難しいのです。

ヨーロッパは美術の売買が日本より盛んであると同時に、作品が充実した堅い市場でもあるから、価格相場は下がっていて買い手市場ぎみだからです。ローンを組んでまで買う日本と違い、ドイツでは焦って買う必要はそうありません。

相手にすれば、チャンスは何度もあるわけです。代えはいくらでもいる。アートに正価はなく内容しだいで買値はピンキリだからこそ、作品の量も質も豊富な市場では、無名の作者がとれる価格レンジに限度があります。

日独の相場の差どおりに下げると、日本としては貴重な代表作が惜しい。そこで惜しくない作品を選ぶと、ベストでなくなる。別問題として、傑作が手元にないなら出すものがなくなるし。これらの難題をまとめて解決するために、ジクレー版画で作戦を組み直しました。ジクレーなら制約なく何でも出せる。

ジクレー版画で、展覧会の目的も変化します。売る目的が前面に来ます。原画と違い惜しまなくてよいし。売り物のつもりでない作品さえ、商品化の視点で考え直せます。編集や用紙選びで、味付けも変えられるし。

相手の予算内に収まる利点と引き換えに、一発当てるロマンは引っ込むでしょう。夢から現実へ。必然的に手数を打って次につなぐ作戦となります。こうして、リサーチして補強しつつ前進するのが、現実に合うと判断しています。もう日本人画家は珍客ではないから。成果は少数精鋭展につながるようにします。
2017/05/21

ジクレー版画を制作する展覧会に歩を進めた理由

ジクレーとは原画を撮影し、インク式プリンターで刷った作品です。プリンターはプレス機と同じだから版画です。この方法が昔あれば、喜んだ画家のひとりはムンクかも。彼は後に『叫び』を自分で木版画に彫り直し、複製して売りました。

「ジクレー制作は未経験だし、普通に原画を展示したい」という希望も聞きます。前は普通に原画を展示していましたが、現地で通用しにくい場面を体験しました。原画の値段が通用しなかったのです。原因は内外価格差です。

たとえば音楽CD。一昔前に国内盤は一枚3000円でしたが、それを香港に輸出すると現地価格1800円でした。裏を知った日本のリスナーは香港からの逆輸入盤を買い始め、国産CD販売元が一定期間逆輸入禁止にしたいきさつがありましたね。あの頃のアメリカでは、旧譜のCD盤が1000円程度。

日本のみ高額なのは美術も同様で、日本の画家は外国では高すぎて値下げを余儀なくされます。現に何度も売れた画家は、ぐっと低い価格で出していました。安くなるからもったいなくてA級作を送れず、B級作を送る結果になったりします。最高作が大作や売却済みだと、原画を送れないし。

しかも、美術展の目的にも内外差があります。日本は見物が目的で、ヨーロッパは買い物が目的。現地には世界のアートが集まり、国際市場化しています。売買総量も日本よりはるかに多く、美術がありふれているから価格破壊しています。日本で美術が高いのは、買う人が少ないから。市場が細いから。

ドイツでのジクレー化の読みは当たり、売れる作品数は増えました。売れない理由は値段かも知れないという迷いは消え、作風の嗜好や完成度などに課題を絞り込めています。原画展の場は別ステージで用意しています。
2017/04/03

来年2018年用ジクレー版画の募集開始

2018年のジャパン・フェスティバル・ベルリンに出すジクレー版画の募集がスロースタートしました。毎回の目標があり、次は価格アップ作戦です。

今回、会場の別ゾーンにあったサブカルプリントを偵察しました。こちらで出したジクレー版画は、似たサイズのサブカルの4~20倍の価格で売れました。しかしこれは仕様の差もあり、こちらの用紙は超高級なのでプリント料がかさみ、最低価格が高くなります。

美術品は永久保存が前提だから、経年変化しにくい紙、染料でなく顔料で堅牢なハイエンドインクの、耐久性ある仕様です。用紙は世界的に高級な日本製かドイツ製です。

しかし現地の購入客は、財産価値にはあこがれません。絵のコンテンツである意匠イメージが目当てで、資産価値やリセールバリューを考えないのがドイツ。後日の値上がり期待で買うわけではないから、作風のへたりは気にしても、紙のへたりは気にしないほどで。

原画よりも安価に出せる版画に替えたことで販売数は増えましたが、販売数を追うと値下がりを招きます。日本美術の価格破壊が起きないように、多角的に研究する回にもなります。