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2019/07/15

美術と税金を理解不能にした勘違いはこの二つ

過去に、知らない他人と美術の話をして、埋まらないギャップをよく感じました。何が支障なのかがまだ不明だった頃、他人はわからずやだと思ったものです。後に怖い構造を知りました。前提を間違うと、玉突き的に間違いが広がること。

埋まらないギャップの原因は、日本語の語感でした。すなわち「美術」の語が諸悪の根源です。「美の術」という言葉から「絵や彫刻は美しくあるべき」という前提が導かれ、日本人の脳内に隠れています。美という語が日本語訳だけにあるから、アートの制作も鑑賞も、日本だけが耽美的な古風になりがち。

「灰色の絵画やモノクロ写真は、美に欠けるので正しい美術でない」「その美しくもない絵が世界的に評価が高いというなら、僕も一応それに従いますけどね」と。「世界のピカソならよし、日本人はだめ」。屈折がつきまといます。アートワークはビューティーだとのいらぬ制約が、他国にはないハンデ。

前提の間違いは税制でも起きています。参議員の候補者に、消費税を廃止する主張がみられます。賛成意見の陰にやはり出てくるのはこれ。「減税して税収が減ったツケは誰が払うわけ?」「税金を何だと思っているんだ?」。

書いた人は、国家の運転資金を集めるために、国民が出し合うお金が国税だと勘違いしています。何だかまるで絵画『ゲルニカ』を見て、「灰色の絵は美しくないから厳密には美術失格」という反応と似て。専門家が誤解を率先し、デフレから出られない平成の奇妙な光景でした。

政府はお金を発行する立場だから、不足して困れば刷って市場へ入れて済みます。国と家庭は同じという説明は引っかけで、政府は貨幣を刷れる神の地位です。刷る時に誰の預金も借りない。国税は何なのかは、物価の安定と所得再分配です。徴税を財源確保だと頭から誤解する限り、失われた27年は30年、40年、50年と続く。
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2019/06/09

絵のモチーフはひとつを繰り返す方が傑作が出やすい

アメリカのある予言者が、日本の東日本大震災を初め、世界で起きた事件を予言した実績を誇りました。ノストラダムスのあいまいなポエム文を、現代の出来事へと言い回しで結びつけるトリックと違い、具体的に何年何月に大地震が起きるぞと、的中させたのです。

的中が本物だと信じる理由は、事前に予言内容を郵便として出し、局に記録がある点です。郵便や記録を偽造と疑うことも可能ですが、日本のテレビ番組では予言は本物だと解釈していました。しかしもうひとつ、隠れた情報がありました。

その予言者は年に三万通の郵便を出していたのです。鉄砲を数撃ち、いつか何かに弾が命中する方式でした。それならとスタッフを増やして三百万通出せば、日本の今後820年間に起きる地震を、一日単位の精度で的中できます。時刻も的中させるなら向こう34年分。たくさん予言すると、どれかはぴたり当たる。

このやり方に近いのが、ピカソの絵でした。ピカソは絵を壊して再編するアドリブ方式なので、偶然の当たり外れが激しく駄作が増えたのです。そこでギネスブック記録にもなった世界最多の作品数によって、傑作の数も多い結果を得ました。

当展示企画の参加者も同じで、「おっこれはいけるぞ」という作品は、同じか似た構図の類似作が何個もあるものです。グラフィックデザインも同様に、試作が持ち上がって完成するのではなく、同じものを何度も一から作り直して、同じ図案の別案へ生まれ変わっているのが普通です。

この事実は、画家が一モチーフを一作で終わって、はい次と渡り歩く気分転換した制作法では、完成度が出ないことを示すでしょう。似たような作品をこりずに繰り返すことで、偶然どれかが絶品になっていたという結果論があります。
2019/05/12

美術作品の価値がわからない日本人の悩み

最近、個人サイトのアドレスを引っ越しました。プロバイダー契約に付属する容量貸しがデフレ不況で廃止され、紹介された別事業者の無料スペースは、CGI やPHPはあれど広告が出る欠点があり、結局独自ドメイン内に収めました。

サイト移設は検索ランクを受け継ぐなら手続きがありますが、訳ありで裏技だけで済ませたら、早く検索に現れました。そのついでにあれこれ検索してみると、目についたのが「美術の価値がわからない」と書いたサイトの多さです。

「美術がわからない」でなく「美術の価値がわからない」と、「価値」を書くのは実に日本的です。国民が芸術を理解できない前提で話が進められている問題です。ドイツでは普通、「自分はこの作品のよさがわかった」と思って買うわけです。

ところが日本では、「自分はこの作品の価値がわかるべきである」と思いやすく、鑑定みたいな鑑賞になりがちです。価値とは値上がり益の見込みかという、揚げ足とりは一応やめておきましょう。

としてもその裏には、神が知る絶対的な価値がある前提で話をしている疑いがあります。ポピュラー音楽を「聞いたがわからない」とは言いますが、「聞いたが価値がわからない」と言うでしょうか。美術の時だけ価値にこだわる空気です。

価値は神ではなく人が決め、雲の上の人ではなく僕らが決める。この正解を音楽の時は発揮し、美術の時は消える条件反射がくせものです。万物に固定した価値なんてものは実はないから、自分なりに賞味すれば済むことです。美術鑑賞こそ自分勝手の発揮しどころなのに、皆さんコチコチでギクシャク。
2018/07/30

犯行の動機と制作の動機は真相が闇の中

世界最悪のテロは、1995年の日本で起きた地下鉄サリン事件とされます。カルト宗教が化学兵器を使い、不特定多数の殺りくを成しとげた唯一の例だから世界一。政情不安な国でも、ここまでの惨事はないらしく。

日本国民に最悪の感覚が薄いのは、当時のカルト団に賛意が集まった点もひとつ。今も犯人側に同調する識者は多く、外部応援団がいた当時のままかと錯覚するほど。日本を変えたい潜在願望の層の厚さなのか。

目立つ同調はテロ実行犯は良い人だというもので、これはマインドコントロールが広範に及んだ当時を知らないと理解が困難でしょう。警察官や自衛官など公務員も入信し、事件阻止と捜査に逆風が吹きました。団体と報道関連の縁故も複雑にからんだ難事件でした。

今も聞く意見に、「事件の動機が明らかになっていない」があります。この動機解明願望の例として、ジョン・レノン殺害事件を思い出します。延々と続く「動機は何だ?」の問いに、動機の解明とは何だ?を思うのです。

動機は犯人が語っています。なのに未解明との声があるのは、解明内容が気に食わないからか。自分なら殺意なんか抱かないから、告白内容は虚偽なのであり、代わりにアメリカの闇を早く白状しろという思いのファン。望む解明内容を延々と待ちわびることになるという。

動機の闇といえば、絵画制作の動機が記憶にない現象もあります。画家なら知ることで、制作には自発と偶発が混じり、作品はただ残るだけ。ピカソ『ゲルニカ』がモノクロ画調である動機は、戦争表現の意図よりも、大画面に塗る絵具の混色がめんどうだったのかも。動機なんてこんなもん。
2018/06/19

ワールドカップ2018で日本がコロンビアに勝ったのは順当か意外か

今夜の日本のサッカー試合も、事前のフラグどおりの結果でした。すなわち、前評判が高いチームは振るわず、最低最悪と言われたチームが善戦する法則です。期待と結果がひっくり返る、いつものお約束というか。

勝てそうなら負けて、負けそうなら勝てる結果論が、サッカーには異常に多い。ロシア大会のここまでの試合は、その法則が次々と表れています。ドイツに勝ったメキシコ。そして日本も。むろん偶然を含めた乱高下で逆転できる程度には、底力がある前提ですが。

評判と結果が逆転しやすいのは、人間の脳内で安心と不安がパラドックス的に作用するせいでしょう。開き直りや居直りの集中力や馬鹿力。アベレージの差が消えるほど躍進したり、逆に空回りしたり。手を使わないサッカーでは、その凸凹が増幅され、事前予想をくつがえします。

しかし同時に、見守る周囲も安心と不安で動揺を増幅させ、絶賛や非難で激しく反応します。今回の日本の監督解任も、鴻鵠の志を知らぬ取り越し苦労が濃厚。三カ月前のウクライナ戦とは逆に、2006年と2014年の日本は最高の仕上がりと言われ、本番の結果は散々でした。

ある程度で済まないほど、あべこべ結果が多発するのがサッカーのワールドカップです。不思議だけれどわかる気もするとしても、他の競技ではそれほどの番狂わせは少ないようで。サッカーの特異性でしょう。

身近には、美術作品でも起きている気がします。よくあるのは、素晴らしいスケッチ画をキャンバス画に仕上げると、つまらない作品に終わる結末です。どうでもいいスケッチの方が着彩して伸びる、逆転の法則。しかしこれは似ているだけで、サッカーの法則とは関係なさそう。
2018/06/14

サッカーの貴重な一点と、美術の貴重な一点

サッカーワールドカップ2018ロシア大会の、賭け予想に使うオッズがイギリスで発表されています。日本代表チームは勝てそうにないから倍率が高いのですが、アジア勢では最も勝利に近いと予想されています。おそらくジャパン・ミステリーというもの。

日本チームに期待される何かは、まずは幸運でしょう。サッカーで耳タコのことわざに、「強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いのだ」があります。勝負は水ものだから、結果をみて初めて強弱を言えるという、ゲームの不安定さを言っています。

サッカーと逆の傾向はバスケットボールで、得点回数が多いし、地力と逆になるほどの誤差は出にくい。力量差の最新推移が、結果に相関しやすい。サッカーの方が番狂わせが目立つのは、得点回数が極端に少なく、また手元の狂いよりは足元の狂いの方が大きいからでしょう。

だから、仮にジダンにでも長く監督をまかせ、試合直前に高校教師に監督を取り替えても、「自分たちのサッカー」で勝てる可能性はあります。それだけに、チーム育成と本番の指揮を別人が担当すると、手柄があいまいになり喜びも悲しみも半減する道理で。

ところで、美術制作の勝ち負け。日本なら受賞を目指す公募コンテスト展、外国なら売却を目指すアートフェア。これらに作品を出しての勝負は、果たしてどの程度水もので、番狂わせが起きやすいのか。貴重な一点とは。

誤差どころか、ワザありの尺度がTPOで正反対なのが美術です。なぜこれが高く売れた?、なぜこっちが売れない?。スーパー水もの。それどころか零点のみじめな全敗が、百年後に値千金に輝くかも知れず。おもしろさを通り越して、わけわからん混沌がいつものことなのがアート。
2018/05/13

ロストテクノロジーが暗示する芸術の運命

ピラミッドとアポロ宇宙船の匿名ネット議論は、芸術の考察に役立ちます。それは宇宙人と地球人との関係や陰謀論という切り口よりも、人類のロストテクノロジーの観点です。この手の話題は何度もやってきました。

ピラミッドは科学技術が発達した今も作る方法がわからないから、宇宙人が作ったのだという説。アポロ宇宙船は六回着陸した後に、科学技術が発達した今の誰も月に行けないから、『2001年宇宙の旅』の映画監督を起用したスタジオでの芝居だったという説。キューブリック罪人説。

どちらの俗説も、信じる人の輪は急速に広がっていて。両方に共通するのは科学が発達した僕らは、能力向上し続けている前提と自負です。そこには、過去の技術が消える視点が抜けています。

最近イギリスから届いたニュースは驚きでした。学校にある時計を読めない生徒が増えたから、デジタル時計に総入れ替えした話題でした。長針と短針の位置で何時何分何秒かを読み取ることが、もう人間にはできない時代に入ったのです。原因はスマホらしく。

つまり針式のアナログ時計は、ピラミッドやアポロ宇宙船と同じ立場です。いずれ製造もされなくなり、人類にはそんな装置は作れない説の候補が、またひとつ増えた。他の候補は、ロータリーエンジンにディーゼルターボ、MT車、ガス炊飯器やカラー写真フィルムなど、ロスト予定がひかえます。逆にロストしなかった例は、音楽レコード盤。

「今の僕らにできないことは、昔はできたはずがなかろう」という現代人の自信。それは違うでしょとわからせてくれるひとつは、美術です。昔の絵を卒業したつもりでも、似せて描いてみれば浅く平坦な表現がやっとだとか。そのせいで、各国で古美術修復の失敗が続出しています。
2018/04/08

国際宇宙ステーションと歴史名作美術の鑑賞

銀河とブラックホールの力学や、ダークマターの新説がニュースに出ました。宇宙関連の話題が出ると、しばしばネットで目にする記述があります。「アポロ宇宙船は半世紀前に月へ行ったのに、その後一度も行かないのはなぜ?」。

言外にあるのは、今行けないなら昔も行けたわけがなく、当時のアメリカが国際社会をだました説です。実は行かずに芝居をしただけだと。あれから月へ人が行かない理由はむろん金がないからですが、一般には経済理由は大人の事情なので、理解する人は限られるでしょう。

アポロ以後に高度成長した日本では、金銭で困る小学生も少なく、経済観念は育ちにくかったでしょう。ユニセフが現在の日本を、児童が貧困な国としてリストアップしたのは新しい現実ですが。

科学研究の縮小といえば、国内ではスーパーコンピューターの「二番ではだめですか」があり、世界では宇宙望遠鏡の打ち切りがありました。日本もコスト負担し、幸い次の望遠鏡が打ち上げられ消滅は免れましたが。

次に国際宇宙ステーションへの出資を中止すると、アメリカは言います。ロシアと日本と、EUやカナダだけで維持は困難です。中国が作らないと消滅し、「昔あった国際宇宙ステーションは実はCGを使ったねつ造だった」と、アポロのように半世紀後のネット事典に大々的にのるかも。

昔はできて、後にできなくなったものは多くあります。身近だと木製タンス、ブラウン管、将来はガソリンエンジンとか。ターボなど誰も知らない未来が来るかも。人類のロストテクノロジー問題です。たとえば美術の名作鑑賞にも、消えた技術の痕跡をふり返って味わっている面があります。
2018/03/01

仮想通貨ビットコインの投機と絵画の投機の違い

ビットコインなどの仮想通貨を買うのは、絵画と同じでインチキだと、ネットでは言われます。どちらも値上がり確実だと信じたら、損するぞという主張です。こちらで最近、仮想通貨と絵画の違いを記しネットに出しました。

仮想通貨の原理を説明し、値上がりするカラクリを分析し、絵画とくらべています。ただ、今の仮想通貨の目的は単純で、要は無限連鎖講です。しかし一方の絵画は無限連鎖せず、もっと複雑な価値に支えられています。

絵画を買う人は、互いに異なる作品を手にします。横のつながりがなくて個々が独立しているから、盗まれた作品が他と混じって見分けがつかないこともなく。

仮想通貨は早い購入者が遅い購入者の納入金を横取りする仕組みですが、美術にはこの横取り機能がありません。ピカソ絵画を買った人が、ダリ絵画購入者の金を得ることはなく。美術は仮想通貨のゼロサム(総合計がゼロ値のシーソー)と違い、有用性の合計が実際に増えます。

買いたい人が二人以上(競売では一人以上)いると、値上がりが始まる点は仮想通貨と同じです。しかし絵画は仮想でなくリアル物品だから資金プールはなく、仕手戦で価値を落とされる心配は小さいでしょう。

数字上のゲームと異なり、確かなビジュアルイメージが絵画です。意外に大きいのは、選ぶ目の効用です。選択眼に自分らしさが表れ、家にアートを置けば自分の芸術観が表明される。全員が異なるものを買う複雑さゆえ、絵画についていけない人は仮想通貨よりもはるかに多いでしょう。
2018/01/08

美術作品の審査につきまとう問題とアートフェア

審査とは検閲なので、受ける側は不安です。不合格だったらいやだし。しかも審査する側に確かな基準や軸線がなかったり、ずさんかも知れないし。何年か前に、審査員と出品者が裏でつながっていた大規模公募コンテストがニュースになりました。評価の恣意性に乗じた出来レース。

ここでやる審査は、公募コンテスト式の切り捨て目的ではなく、出せるものを探す目的です。おこがましく言うなら、引き上げ方を見抜く審査。アートフェアだから、一応フェアです。意外に多いのは、出し惜しみでB級作を選ぶ失敗を防ぐことです。これは一応ジクレーで解決済み。

しかし実物も高精細写真もない場合や、既存作品がイマイチな時は、新作の方向をまず決めます。現代の美術家の大半は作風を複数持つスイッチワーカーであり、スイッチし間違うと徒労になるから。

作者の関心と外国の関心を重ねるために、より芸術的な作風を選ぶのが基本です。芸術的であるがゆえにお客に嫌われてしまう事態は、欧米では少なめとわかっています。残念ながら日本では今も多くて、参加者からもトンデモ体験がちらほら耳に入りますが。

日本だと保守対革新や具象対抽象のあつれき、ヘイトに巻き込まれる不安があります。具象だけがわかる画家が審査し、抽象が切られてはたまらない。よくあるパターンと違うから、間違った絵だと言い出す審査も横行。作品をわからないと言わず、嫌いと言い出す。自身がついていけない作品だとは白状しない、困った天の声。

結局その不合理を人類は解消できないと自覚したから、欧米の新作大規模展覧会はコンテストでなくアートフェアという、マーケット方式が主流になっています。見るお客の全員が審査員となり、しかも評価して終わりではなく、評価者が買い取る本気の対決になります。
2017/12/14

芸術はロストテクノロジーだというおもしろ説

芸術弁論タブーのひとつは、外国のアートにくらべ日本のアートが劣っている話題です。それよりもっと大きいのは、人類にとって芸術の意味が変化している話題かも。悪い変化に触れるタブー。ダーウィンの進化論と似て拒絶反応が返ってくるから。

ちなみに進化論が今も猛烈に攻撃される動機は、よく言われる宗教との整合問題は二の次です。最大の動機は、猿が人間に進化するという誤読で生じました。チンパンジーなど霊長類との確執。えっ、誤読だって?。

進化論を嫌う感情の正体は、人の祖先が猿だとは許せない自尊の思いであり、だから昔からダーウィンを猿の顔に描く仕返しが多発しました。しかも実は曲解です。ダーウィンは猿がヒトに変化したと言っていません。言わないのに言ったとカッカする人類の動機は、類人猿を嫌う本能の先走りでしょう。嫌いだから焦った。

かくも感情で収拾がつかない類例に、ロストテクノロジーがあります。昔の人にできて、今の人にできないこと。MT車のダブルクラッチ?。一例はエジプトの大ピラミッドで、現代人が信じたくなる説は「当時地球に飛来した宇宙人がピラミッドを建てた」「それなら今の僕らに作れないのも納得」。

似た感情がアポロ陰謀説で、50年前の人にできて今の人にはできないから、映画監督がスタジオで収録した壮大な芝居だった説が、正論を圧倒しています。日本では若者のほぼ全員が半信半疑で、ピラミッド同様に永劫の疑いを克服できない人類の宿命として映ります。

これらロストテクノロジーが、芸術に起きている疑いがあります。昔の作品を見てインスパイアされ、燃える思いで作った成果がショボい現象です。後発の作品ほど彫りが浅い。太古よりも必ず縮こまり、スケールが小さい並品どまりです。人類が技術を失いゆく現象が、建造物や宇宙旅行だけでなく芸術にもみられます。
2017/10/28

ケネディ大統領暗殺の公文書をトランプ大統領が公開

アメリカ民主党のケネディ元大統領暗殺事件の公文書を、共和党のトランプ現大統領が公開するという話題です。暗殺だからもちろん陰謀ですが、主犯が公的機関にいると世間で言われ続けた最大の理由は、銃弾の不合理でした。

大統領の被弾は、背中と首を後から、頭を前からとされます。逮捕され二日後に殺されたオズワルドは、大統領を後からは撃てても、後へ向けたマンストッピングはできません。近年の情報は、3種の銃から計5発だという。狙撃者は3方向にいたのに、公式記録では単独犯。独りだとするなら、誰が口封じしたのか?

事件後たくさんの憶測やつくり話の陰謀説が故意に流され、論が踊りました。かなり前に日本のテレビ特番を見た後輩がこう言いました。「大統領の奥さんが、散らばった脳を手でかき集めるシーンが放映された」と。今のネットでも同じ説明が出回っています。

いわゆるザプルーダーフィルムを見ると、なるほどオープンカーのトランクリッドに乗り出した妻ジャクリーンが両手でゴシゴシします。ところがよくよく見ると、そうはしていません。ジャクリーンは、片手で何かをつまみ上げただけ。かき集める動作とは違う。よくよく見れば。

「両手で脳をかき集めた」ではなく、「片手で骨片を拾った」が正解です。直行した病院で医者に骨片を渡した記録が残っています。だから、彼女が車から逃げ出そうとした説もつくり話です。言葉の説明に支配され、映像が違って見える不思議な現象が起きた例です。

美術でも「この絵はこれこれです」の言葉を先に仕入れると、似た体験が起きるでしょう。集団勘違いやデマも起きるでしょう。ところで公文書というもの。ゴッホの当時の公文書がみつかれば、絵に関する秘密やおもしろネタも出てくるかも知れません。しかし現実は、当時無名すぎて他人による記録はなかった。
2017/08/02

ジャズピアノのジェリ・アレン死去から一カ月以上

アメリカのジャズピアニストのジェリ・アレンが、6月27日に亡くなって一カ月以上たっています。が、日本語ネットに情報は少なく、かなり知られざる人だったのかと感じさせます。

ピアノの達人タイプでなく、作曲も含めた個性を聴かせるタイプで、不穏でスローな節回しを流し込むスタイルはすぐ判別できるもの。反面、職人気質プレイヤー好みの日本では、個性の人があまりウケないのはやはりというか。不思議な造形の抽象画家のような、微妙な地位のピアニストです。

スタンダードナンバーを演奏して、古参リスナーをうならせるには向かず。『100ゴールドフィンガーズ』と称する、NYから日本へ大物ピアニストを一度に10人呼ぶジョイントコンサートに出た際に、話題にならなかった覚えがあります。日本では悲運にもブレイクせずの感。

アメリカのジャズシーンに、同じ女流で有名なリズム楽器演奏家が少数います。歌うベーシストとして世界的スターとなったエスペランサ・スポルディングと、著名ドラマーのテリ・リン・キャリントンとACS JAZZ TRIOを結成して活動中。突然の訃報なので、アルバムはなくNYコンサートも穴があいて。

日本では各界で女性を優先的に起用しては、前代未聞のトラブルで幕引きするパターンが続きますが。ジェリ・アレンは夢の共演も続き、バークリー音楽院の名誉博士やピッツバーグ大学の教鞭など、後進の育成も順調でした。

しかし90年代後半からのジェリ・アレンは、若き日のカルト的な作曲も演奏も薄れていたのも事実。カルト的な画風の画家が、毒が薄まり埋没ぎみになってきた時のような焦りを、このピアニストに感じていました。
2017/07/12

ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)の和音が日欧で違う?

その昔、西部劇の映画でカウボーイだかガンマンだかが、ハーモニカで吹いたメロディーだったから、映画のサウンドトラック用としての作曲だと思っていました。後に、実は古いアイルランド民謡だと知った曲が『ダニー・ボーイ』。

ある女性が採譜記録した後に、アイルランドのロンドンデリー州の人が世に紹介したので、『ロンドンデリーの歌』と呼ばれます。アイルランド島北部の陸続きで、現在はUK(イギリス)に含まれる地名ロンドンデリー。

後世に何種類も歌詞が当てられ、フレデリック・ウェザリーの作詞でヒットした同曲が『ダニー・ボーイ』。題名からして、アメリカの西部劇を連想させます。西部開拓史の、いわゆるボウイ・ナイフなどがすぐに浮かんで。その曲に当てた和音が日欧で異なる理由が気になります。

冒頭の歌詞「Oh Danny boy the pipes the pipes are calling」の「ボーイ」で始まり、「パイ」でどの和音を当てるかで、ヨーロッパと日本では趣味が異ります。ヨーロッパではメジャー・セブンス・コードで始まり、「パイ」でセブンス・コードにチェンジすることが多い。ググッと変化する劇的な展開が、どうやら欧州人の趣味です。ダイナミズム優先。

対して日本人が歌うバージョンでは、「パイ」もメジャー・セブンスからチェンジしないアレンジが多いのです。だから、ヨーロッパ式はクラシック名曲やジャズのコンボ演奏ふうに聴こえ、日本式はイージーリスニングか童謡ふうです。日本の方が平坦で抑揚が乏しい。

ヨーロッパ式はドラマチックな都会型で、日本式はのどかな田園型という違い。この違いは、双方のあらゆる表現物に広くみられます。日本の制作物をヨーロッパへ持ち込むと、日本人が感じるよりも薄まった表現に映り、主張不足に見られやすいという普段感じる法則どおりです。
2017/04/23

タイタニック号の支配者と現場の声と

ハリウッド映画のパターンといえば「ボーイ・ミーツ・ザ・ガール」が真っ先に浮かびますが、意外に多いのは「ザ・タイタニック・スタイル」です。別にそんな言葉はなく三日前に思いついた造語で、これは豪華客船タイタニック号の物語です。

タイタニック号の船長は、会社でいえば社長でした。しかし操縦した船自体は、社長の持ち物ではありません。オーナーたる船主が別にいて、そちらの方が権力が上です。船長は雇われた部下にすぎず、物語全体を支配する頂点にはいない。

タイタニック号の沈没は船体の強度不足による浸水が主因とされ、船長や船員はやるだけのことをやって死亡していました。この物語は、企業オーナーたる株主が運営に無理を強いて組織全体を破滅させる、そんな運命を類推させるものです。強者が机上で考え、現場の弱者を死なせてしまう失敗パターンです。

なぜこんなことを思い出したかといえば、動画サイトの広告で似たものが出回っているから。油田の掘削で資本家と現場側が衝突し、資本家の強行に現場が従わされ、大事故となるパニック映画の宣伝が流れています。

「これからの時代は株主の利益を第一に」と言って言って、言いまくったあげくに「強い株主」を実現した日本で、名門企業が次々と破滅し沈んで消えたり、日本からいなくなったこの19年間が、「ザ・タイタニック・スタイル」を思わせます。

欧米、とりわけアメリカの人たちが、「企業は誰のものか」を昔から強く気にしてきたことを、この筋書きの映画の多さで推測できます。「現場の声に左右されてはライバル企業に勝てない」「しかしその強行に反社会性はないか?」という永遠の対立が、作品モチーフの定番になっています。
2017/04/06

連続テレビ小説おしんの心境と制作インスパイア

今日気づいたことですが、連続テレビ小説『おしん』(1983)のテーマ曲に元ネタがあったのかと感じました。ジョニー・ピアソンの『ヘザー』がそうで、きっかけはカーペンターズのベストセラーアルバム『ナウ・アンド・ゼン』(1973)。しかしネットにこの情報は一件もなく。

出だしから曲の回し方が似て、共通するコード展開です。途中で和音がガク折れして、テンションを高める部分はもうそっくり。ただし主旋律は異なり、盗作と感じない範囲でインスパイアーかもという程度です。『サウンド・オブ・サイレンス』と『夜明けのスキャット』の関係に近い感じで。コード拝借なら『チェロキー』と『ココ』みたいなものか。

『おしん』のテーマは開始わずか5秒でサビとなる劇的な曲で、連続テレビ小説シリーズの曲としては最高傑作と定評があります。1980年代のアメリカから始まった、低域を厚くした音づくりを感じさせるもの。『おしん』の市販サウンドトラックはモノラルだったので、ステレオ盤が待望されていました。

ところで、鳴かず飛ばずの曲を劇的に改良した例に、ジョージ・ハリスンの『マイ・スイート・ロード』がありました。盗作裁判の原告側が示した元ネタ曲が、煮え切らないもどかしい不発作品で、ジョージはすごい人だったと改めて感じた人も多かったのでしょう。

もっとも、既存作品の改良作業はたやすい一面もあるはず。現に、表現物の多くは他の表現物を参考や踏み台にしています。ほとんど似ない場合でさえ、そうです。しかしまた、オリジナル作に最も普遍性が宿り、二番ものは亜流くさい例も多く。

以前の美術大学教育で、有名画家作品の模写が不自然に高く評価され、劣化コピーの推奨ぶりに部外者があきれたニュースがありました。オマージュは本来、元祖に対して「出藍の誉れ」といえる差異と向上が期待されるはずで、盗作の別名で定着するのは衰退フラグなはず。
2017/04/01

エイプリルフールとフェイクニュースサイト人気

日本にエイプリルフールは定着せず、日本の新聞社が試しにジョーク記事をのせるたびに、読者は怒り出したものです。生真面目で冗談が通じにくい東アジアの地域性なのか、中国共産党もこの風習に乗らないよう人民に呼びかけています。

エイプリルフールの虚報を真に受けた例に「アポロ陰謀説」があります。月に降りた12人に、今の価値で総額1億円もの口止め料を払ったとされる虚報。元は4月1日制作と記した英テレビ番組(放映は別の日)でした。ところが横暴なアメリカ国への憤まんのはけ口となり、アメリカ下げのプロパガンダとして特に日本のネットで定着しています。

「巨大イナゴ」「スパゲティのなる木」も、今も信じる人がいます。よくあるパターンは「ツタンカーメン王の呪い」で、冷遇された出版社の恨みの創作と当時は知られていたのに、年月経て信者が増えた時間差洗脳でした。テレビのウルトラシリーズも後世に、宇宙生物が地球に来ていた証拠映像として引用されるかも。

ところで、今や毎日がエイプリルフールです。たとえば、水道水に「ありがとう」と言ったり、モーツァルト曲を聴かせると、味がよくなるデマがあります。デマと言われて反発する立場は、水や装置の販売業者だけでなく、一般人にも広がりました。デマを肯定する動機は、アクセス広告収入とアフィリエイト収入欲しさ。

見え透いたデマでも洗脳の確率統計で期待して使うのが、今日のフェイクニュースサイトです。米トランプ大統領の選挙でも、国内外のフェイクニュースメーカーが複数動員され、有名な虚偽報道サイトはロシア企業でした。デマの流布は中国以外は合法だから、常にやり放題です。

新聞社がてこずった日本のエイプリルフールも負けじと、江戸しぐさの虐殺とか。「ニセの情報に気をつけろ」という警告はほぼ無意味です。人が享楽と利害で正誤を決め取捨する、美術展の審査に似たやり方はなくなりはしないはず。こうして、芸術のモチーフ自体は増えている感触もあります。
2017/02/25

39光年離れた惑星へ人類は行けるのだろうか

ある恒星に、地球に似た惑星が7個あるらしいと、NASAの記者会見がありました。地球からの距離は39光年で、宇宙的規模では地球のご近所さんです。このニュースへの反応で、「光の速度で39年なら、往復で人間の一生ぎりぎりか」という意見がありました。

実際には、はやぶさ探査機の巡航速度でも片道39万年かかる計算です。縄文時代から今までの1万5千年の26回分の時間です。光の速度で考えた時点で、1万倍もずれています。だとしても、すでに行った月旅行を応用してその惑星へも何とか行けないのかと、疑問も起きるでしょう。

が、月旅行と火星旅行の違いと同じで、距離は決定的です。地球から月までの距離が地球一周分の9.6倍だとは早くにわかっていて、月に限ればとても近い。月旅行の提唱はアポロ計画より100年以上前にあり、ゴッホが生まれる以前の古いアイデアでした。

39光年は月までの9億6千万倍なので、科学者は行くつもりにもなれないでしょう。同じ夢でも、実現性に大差があります。月と他の恒星は距離が7桁以上違い、どうにもならない壁です。ところが必ず出てくるのが、「今の科学技術なら無理でも、将来の科学技術なら行けるだろう」という言い方です。

「もし可能になる方法があるなら可能になる」式の虚しい循環論ですが、これも量的な拡張で済むか、未知の原理に取り替えるかで、確かに違いは大きいでしょう。燃料式モーターでは宇宙船の速度は上がらないから、空間の抜け穴を発見する想定が多いようです。SFの世界です。

「可能な方法」とはワープを指し、元は小説や映画のアイデアです。この現象は、フィクションが未来への期待をつないでいる点で、創造の効用の一面を感じさせます。漫画のおもしろさも似ていて、フィクションが先行することで、夢想以上のリアリティーが得られる効用を感じます。
2017/01/26

画家が金星をあげる時

このところ金星がとても明るく輝いています。大気に光がにじみ込んで円盤状に見えるほど。金星も月のように満ち欠けするから、半月のごとき半金星になりますが、金星が明るくなる理由は月の場合とは違い、地球のそばに来るからです。

三日月のごとき三日金星になった時、光る部分が細い割にやたらクローズアップされて強く輝きます。今は金星の左上に火星があり、やがて近くに月が来る予定です。正月三が日にも月が来ていましたが、ベルリン展示のことばかりで気づきませんでした。前の冬空は木星が仕切っていましたが。

日本から送った探査機は、金星の軌道投入に失敗していて、再トライでかろうじて成功しました。ずいぶん前のことかと思ったら、今調べると13カ月ほど前の話で。それから観測は続いていて、ただし表面に降りられないから地味な観測になっています。

ところが、ソ連は金星の地盤部分をすでに撮影していて、そのルックスがまた他の惑星と違います。生物が火星におらず金星にいた場合は、大きいサプライズとなるでしょう。まさかの逆転。

ゴッホと同時代の人は、ゴッホの絵が売れるようになる未来は、まず考えなかったように思えます。その証拠は、ゴッホの死後に絵の奪い合いが起きていないから。所有権や相続をめぐる裁判もなし。ゴッホの絵は本当にゴミ扱いだった。

ゴッホが出世する確率の低さは、あたかも金星で生物が見つかるほどの意外性だったろうと、今想像しています。だからゴッホへの認知は、同時代の人が心を入れ替えたのではなく、世代交代で進みました。ゆっくりすぎる逆転の金星。
2016/12/07

幽霊に取りつかれた肩こり及びゴッホの統合失調症

キュレーションサイトとは、美術館のキュレーターと同じ語源で、ネット情報を集めて紹介するサイトだそうです。月に2千万アクセスという、アート系ならあり得ない超人気の医療健康情報サイト群が、インチキ情報を発信していた責任で公開を中止するとか。肩こりの原因を幽霊としたり、自殺志願者を引き込む細工が全国ニュースになりました。

インチキ情報とは、学者などの優れた論説をネットで探し、その文章を改変して転用したもの。もし著作権で裁判になっても決定的な証拠となりにくい程度に、言葉をあちこち言い替えて罪をのがれる方法です。その細工の時に、ジャンク文章やガセネタで水増しします。

現場の認識が甘くて起きるわけはなく、一般的には故意の複写作業をメシのタネとして、他人のアイデアを奪ってもうけるネットの流儀どおりでしょう。一応、最初から悪気があってやる類のビジネスモデルが多いのです。

ネット情報は基本的に無料だから、通販ショップ以外は広告収入で成り立ちます。読者がタッチするだけで即収入になる広告もあるから、1アクセスが微々たる金額でも百万、千万、億と途方もなくアクセス総数を増やせば、大金が得られます。

そこで、読者にお手つきさせる手法が種々編み出されました。狙われる例は動画配信サイトで、幽霊やUFO、巨大なカニや磁石人間など目を引くつくり話を用意し、本物や事実と思わせてクリック(タップ)させる手法が一般的。その詐術を医療健康情報サイトの活字でやったら、健康を害した人が出てニュースになったわけです。

虚偽情報は美術分野でも出回っていて、医療健康問題で多いのはゴッホは統合失調症という素人診断です。創造の原因は発狂だという結論を欲しがる大衆向けの、比較的古典的なポピュリズム言説でしょう。このデマは、芸術が苦手な国ほどよく広まるのです。