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2017/04/29

外国人が体験する日本の旅情とは平安時代であろう

現代日本へと続く過去で、よく注目されるのは通算264年の江戸時代です。1980年代には江戸を読み解くおもしろ本が何冊も出てきました。好景気の高揚感が背景の「東京って最高」ブームでした。早くから人口爆発と災害の心配で、東京一極集中が批判されていたものの、30年もたった今も一極集中は進行中です。

明治に急造したかに思える東京は、ほぼ江戸の街が持ち上がったものだそうです。落語も実は、明治の話題で江戸を感じさせる芸。しかし和風文化の本当の基盤は、京都で391年間の平安時代と思われます。現中東や現中国から文物を取り入れた次の、オリジナル開発へ進んだ頃だから。

平安の表現物に紫式部『源氏物語』も含まれますが、絵巻だけでなく当時の屏風絵などで特徴的なのが、アイソメトリック構図です。焦点を無限大とした斜投影図法で、遠くの物が近くの物と同サイズで描かれた大和絵がそうです。理系が作図したみたいな。

これは、建築設計のビジュアル構成図版に今も使う技法でもあり、西洋式の透視図法と違い、奥行き感がなくべちゃっと平板で、模式的な抽象性を感じさせます。遠くにある物体も縮尺が等しい。

ところどころに雲が描かれ、初期のパルテノン神殿みたいに派手な原色もふんだんにあり。また平安時代の発明に動画的な描法もあり、ぶれたり走行の軌跡みたいなモーションのラインも平安の表現です。漫画の元祖だとも言われます。

平安を連想させたのは、日本大好き外国人が撮影した旅の記録映像でした。写した物とともに、写す目も和風に感化されたのか、動画の雰囲気が平安時代の風情に近いのです。まだ歌舞伎や茶華道が生まれる前の、原始的で実験的な和風が現代の日本に残っている気がします。
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2017/04/25

事故の論理という本

テレビや新聞などマスコミとは違い、新興のネットにのみ真実があるというネット優位説が聞こえてきます。ネットに真相が出ることが多いのは確かですが、圧倒的に虚偽が多いから真相にたどりつきにくいのも、ネットの現実でしょう。

そんなネットで商品名を探すと、今発売中のショップページが大量に並びます。が、絶版になった過去の名著『事故の論理』は、言葉自体がネット上に全くないとわかりました。『事故の論理』とは、国鉄の事故調査部署の長が記したドキュメントでした。

列車事故の報告書から抜粋し、なぜ起きたかの理由を解き明かした一般向け読み物で、新書版だったような。印象に残っているひとつは、行く手が赤信号なのに列車を走らせた正面衝突の大事故でした。大勢が亡くなったのです。

「信号の色に注意せよ」という教訓は無効です。なぜなら信号は青だったから。運転士は青信号を確認して列車を進めたのでした。夜の暗がりに浮かぶ信号、その色は赤ではなく青だったことは確か。その青信号は、鉄道用と同じ方向に見える遠方の道路信号機でした。一瞬取り違えたことが、調査と実験でわかったのです。

その本もきっかけだったか、外国人が日本の列車で驚く、あの安全策が生まれました。運転士が信号機を指さし、「信号は青を確認、進行しまーす」と声に出すあれ。行動を自分に解説しながら運転する。ヒューマンエラーを誘う要因がたまたま集中する確率を、自力で下げる方法です。

今日で12年たつ宝塚線の107人死亡事故は、若い運転士が到着遅延の罰則を回避しようと、熱くなって飛ばした脱線と解釈できます。到着の遅れより速度超過の方が罰則が大きいのだと、音読させるマニュアルも必要でした。責任の9割は、本来プレッシャーに弱い人間の脳のはたらきに、上司たちが認識不足だったミス。過労自殺と共通する現象でしょう。
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2017/04/23

タイタニック号の支配者と現場の声と

ハリウッド映画のパターンといえば「ボーイ・ミーツ・ザ・ガール」が真っ先に浮かびますが、意外に多いのは「ザ・タイタニック・スタイル」です。別にそんな言葉はなく三日前に思いついた造語で、これは豪華客船タイタニック号の物語です。

タイタニック号の船長は、会社でいえば社長でした。しかし操縦した船自体は、社長の持ち物ではありません。オーナーたる船主が別にいて、そちらの方が権力が上です。船長は雇われた部下にすぎず、物語全体を支配する頂点にはいない。

タイタニック号の沈没は船体の強度不足による浸水が主因とされ、船長や船員はやるだけのことをやって死亡していました。この物語は、企業オーナーたる株主が運営に無理を強いて組織全体を破滅させる、そんな運命を類推させるものです。強者が机上で考え、現場の弱者を死なせてしまう失敗パターンです。

なぜこんなことを思い出したかといえば、動画サイトの広告で似たものが出回っているから。油田の掘削で資本家と現場側が衝突し、資本家の強行に現場が従わされ、大事故となるパニック映画の宣伝が流れています。

「これからの時代は株主の利益を第一に」と言って言って、言いまくったあげくに「強い株主」を実現した日本で、名門企業が次々と破滅し沈んで消えたり、日本からいなくなったこの19年間が、「ザ・タイタニック・スタイル」を思わせます。

欧米、とりわけアメリカの人たちが、「企業は誰のものか」を昔から強く気にしてきたことを、この筋書きの映画の多さで推測できます。「現場の声に左右されてはライバル企業に勝てない」「しかしその強行に反社会性はないか?」という永遠の対立が、作品モチーフの定番になっています。
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2017/04/19

日本の抽象美術へのテコ入れ作戦

日本で具象美術よりも抽象美術が冷遇以上に嫌われるのは、過去に業界で続いた内戦とヘイトの結果も大きいと仮説を立てています。これは日本人の資質や素養として、根っから抽象が苦手な根拠が特にない証拠立てにもなっています。反日教育ならぬ、半抽象教育が招いた結果。

しかしこの問題の上位にあるのは、世界的な傾向として具象より抽象の方が数が出にくいことです。限られた客層で、選ばれた人のみ抽象を買い求める国際的な実態もまた、厳然とあるのです。人類はまんべんなくオールラウンドでもなく、全般に抽象が苦手になっているのも事実で。

画家が具象画で挑戦するか抽象画で挑戦するかで、課題は異なります。日本の作品をドイツで展示する場合でも、具象画なら目標をローカリズム表現に向かわせることが多くなります。つまり、具象美術は異国情緒をチャームポイントにしやすく、現に推奨しています。

それに対して抽象画は、日本らしく見せるハードルがぐんと上がり、ユニークなビジュアル図案へまとめる苦労が大きいのです。何かを写して似せるという、模写で生じるわかりやすい共感部分を捨てたのが抽象画だから。抽象はマイナスからの出発になりやすい。

モデルの魅力が七難を隠してくれる利が抽象画にはないから、定石を壊して特異性を加えないと、他人の感興を誘わない。佳作の抽象では、佳作の具象より見過ごされるハンデを計算に入れる必要があるということです。

具象画ほどは売れにくい抽象画をパワーアップする作戦で、実は抽象の方が改良の余地はより大きいと感じています。抽象画の方が足りない何かを見つけやすいし、具象より向上の幅も大きいという実感があります。そして何よりも抽象画の方が、抽象思考的にアプローチしやすいメリットがあります。
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2017/04/14

Google Chromeだけサイトの字が大きくふくらむ現象

サイトの見え方の話題です。WEBサイト(ホームページ)は、映すブラウザソフトごとに違って見えます。機材によってレイアウト再現が異なり、印象も変わります。サイトデザインの評価も、見るソフトで差が出ます。

よくある違いは、字や画像間の距離が近く詰まって見えるブラウザと、離れてスカスカに見えるブラウザです。一番多い体験は、横線を引いた上下の活字が横線からどれだけ離れるかです。また、四角スペースを積み上げた全高も必ず違います。

Google Chromeという新型の略式ブラウザソフトが無料配布されて以来、これで見た時だけ文字が大きくなるトラブルがネットに増えました。プログラム機能の不備、つまりバグらしい。

今現在、Firefoxは最も活字が詰まりコンパクトになり、Google Chromeだと活字が大ぶりで横へ広がったレイアウトになり、一行に収まるはずの文が二行に押し出される部分が目につきます。詰組のプロポーショナルフォントが、活版印刷ふう等幅フォントに化けるからです。

Internet Explorerは両者の中間ふうで、以前とは逆にFirefoxに近くなりました。どう作れば個々の違いを乗り越え差を小さくできるかは、WEB会社のブラック就業と過労死の原因でした。個別の解決に定説がないから時間がかかり、しかも毎年変化します。今のフォント化けはこちらで実験し修正できたものの、ネット情報はありません。

無料レンタルサイトやブログは、最も大ざっぱなブラウザでも収まるよう、大ぶりで大味なレイアウトに作ってあります。いかにもアバウトなレイアウトは無料だからというよりも、表示がばらつくカオスへの現実的な対処になっています。
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2017/04/11

良貨と悪貨の論理でビットコインを楽しむ

最近また、放送でビットコインが宣伝されています。円天やセカンドライフを識者たちが絶賛したパターンと似て、国民に警戒される理由は複数あります。仮想通貨でなく決済法や投機商材だとする見解もあり、存在目的がぶれること自体が不安定要因です。

ビットコインに懸念する声に、ののしる書き込みが多いのも特徴。「参加しない者は時代遅れのバカ」と言い切った、過去の大型詐欺事件の勧誘とそっくり。本当に良い物なら、叩かないのがヒトの心理です。ちなみに、既参者は新参者が増えると資産アップするねずみ講の機能があり、買った人が勧誘に回ります。

米ドル、ユーロ、円、英ポンドの四強と違う不安定な通貨の国には、以前から代替貨幣願望があります。要は中国の国民が自国通貨を国外持ち出しするために、疑似通貨を必要としているわけです。日本でも2017年4月から仮想通貨法が施行され、目的は来日した中国人が高額商品を買いやすくすること。

仮想通貨の最大の利点は、当局に知られずに資金を動かせる点で、アングラマネーとマネーロンダリングがユーザーが喜ぶ利点です。だから現に、日本で大金が消滅した事件の犯人は、結局何をどうやってもわからずじまい。

副次的な利点として、決済の手数料を安くできる効用もあります。理論上は。従来の正攻法で日本からドイツへ展示活動費を送ると、特にユーロレート加算部分のコスト負担が大きいのです。国境を越えると大きく目減りするのも現実。

しかし捕捉できない超自由主義で世界は不安定になるはずで、仮想通貨の根底には無政府主義願望もあり、何となく現代アートの一部にみられたアナーキズムと親しい方向性です。国を壊して世界を組み直すおもしろさの一方で、安定と秩序を今も保つ最古国日本に欲しいのは、こうしたデフレ促進要因とは逆方向なのも現実。
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2017/04/06

連続テレビ小説おしんの心境と制作インスパイア

今日気づいたことですが、連続テレビ小説『おしん』(1983)のテーマ曲に元ネタがあったのかと感じました。ジョニー・ピアソンの『ヘザー』がそうで、きっかけはカーペンターズのベストセラーアルバム『ナウ・アンド・ゼン』(1973)。しかしネットにこの情報は一件もなく。

出だしから曲の回し方が似て、共通するコード展開です。途中で和音がガク折れして、テンションを高める部分はもうそっくり。ただし主旋律は異なり、盗作と感じない範囲でインスパイアーかもという程度です。『サウンド・オブ・サイレンス』と『夜明けのスキャット』の関係に近い感じで。コード拝借なら『チェロキー』と『ココ』みたいなものか。

『おしん』のテーマは開始わずか5秒でサビとなる劇的な曲で、連続テレビ小説シリーズの曲としては最高傑作と定評があります。1980年代のアメリカから始まった、低域を厚くした音づくりを感じさせるもの。『おしん』の市販サウンドトラックはモノラルだったので、ステレオ盤が待望されていました。

ところで、鳴かず飛ばずの曲を劇的に改良した例に、ジョージ・ハリスンの『マイ・スイート・ロード』がありました。盗作裁判の原告側が示した元ネタ曲が、煮え切らないもどかしい不発作品で、ジョージはすごい人だったと改めて感じた人も多かったのでしょう。

もっとも、既存作品の改良作業はたやすい一面もあるはず。現に、表現物の多くは他の表現物を参考や踏み台にしています。ほとんど似ない場合でさえ、そうです。しかしまた、オリジナル作に最も普遍性が宿り、二番ものは亜流くさい例も多く。

以前の美術大学教育で、有名画家作品の模写が不自然に高く評価され、劣化コピーの推奨ぶりに部外者があきれたニュースがありました。オマージュは本来、元祖に対して「出藍の誉れ」といえる差異と向上が期待されるはずで、盗作の別名で定着するのは衰退フラグなはず。
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2017/04/03

来年2018年用ジクレー版画の募集開始

2018年のジャパン・フェスティバル・ベルリンに出すジクレー版画の募集がスロースタートしました。毎回の目標があり、次は価格アップ作戦です。

今回、会場の別ゾーンにあったサブカルプリントを偵察しました。こちらで出したジクレー版画は、似たサイズのサブカルの4~20倍の価格で売れました。しかしこれは仕様の差もあり、こちらの用紙は超高級なのでプリント料がかさみ、最低価格が高くなります。

美術品は永久保存が前提だから、経年変化しにくい紙、染料でなく顔料で堅牢なハイエンドインクの、耐久性ある仕様です。用紙は世界的に高級な日本製かドイツ製です。

しかし現地の購入客は、財産価値にはあこがれません。絵のコンテンツである意匠イメージが目当てで、資産価値やリセールバリューを考えないのがドイツ。後日の値上がり期待で買うわけではないから、作風のへたりは気にしても、紙のへたりは気にしないほどで。

原画よりも安価に出せる版画に替えたことで販売数は増えましたが、販売数を追うと値下がりを招きます。日本美術の価格破壊が起きないように、多角的に研究する回にもなります。
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2017/04/01

エイプリルフールとフェイクニュースサイト人気

日本にエイプリルフールは定着せず、日本の新聞社が試しにジョーク記事をのせるたびに、読者は怒り出したものです。生真面目で冗談が通じにくい東アジアの地域性なのか、中国共産党もこの風習に乗らないよう人民に呼びかけています。

エイプリルフールの虚報を真に受けた例に「アポロ陰謀説」があります。月に降りた12人に、今の価値で総額1億円もの口止め料を払ったとされる虚報。元は4月1日制作と記した英テレビ番組(放映は別の日)でした。ところが横暴なアメリカ国への憤まんのはけ口となり、アメリカ下げのプロパガンダとして特に日本のネットで定着しています。

「巨大イナゴ」「スパゲティのなる木」も、今も信じる人がいます。よくあるパターンは「ツタンカーメン王の呪い」で、冷遇された出版社の恨みの創作と当時は知られていたのに、年月経て信者が増えた時間差洗脳でした。テレビのウルトラシリーズも後世に、宇宙生物が地球に来ていた証拠映像として引用されるかも。

ところで、今や毎日がエイプリルフールです。たとえば、水道水に「ありがとう」と言ったり、モーツァルト曲を聴かせると、味がよくなるデマがあります。デマと言われて反発する立場は、水や装置の販売業者だけでなく、一般人にも広がりました。デマを肯定する動機は、アクセス広告収入とアフィリエイト収入欲しさ。

見え透いたデマでも洗脳の確率統計で期待して使うのが、今日のフェイクニュースサイトです。米トランプ大統領の選挙でも、国内外のフェイクニュースメーカーが複数動員され、有名な虚偽報道サイトはロシア企業でした。デマの流布は中国以外は合法だから、常にやり放題です。

新聞社がてこずった日本のエイプリルフールも負けじと、江戸しぐさの虐殺とか。「ニセの情報に気をつけろ」という警告はほぼ無意味です。人が享楽と利害で正誤を決め取捨する、美術展の審査に似たやり方はなくなりはしないはず。こうして、芸術のモチーフ自体は増えている感触もあります。
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