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2018/10/28

コラージュ作品の版画と印刷と複製の関係 |ブランド絵はがき図鑑12

十何年もネットで続けた話ですが、版画と印刷物は同じものです。似ているとかでなく、同一物です。日本では原始的な手回しのプレス機は版画専用で、ハイテクの電子プリンターは印刷専用だと分けて考えます。しかし版画は印刷した絵図を指すから、二つの機械に区別はありません。

プレス記者やプレスルームの語は、新聞社や雑誌出版の用語です。プレスとプリント、版画技術と印刷技術は同じです。各時代の印刷機を使った量産絵画が、版画の正体です。美術の一般化、ホームユースです。

10月27日に東京で始まったノルウェーの画家エドワルド・ムンク展ですが、作者は自己ベストの油彩画『叫び』を再発売するため、木版画も何枚か作りました。写真製版技術はまだなく、フルカラーが可能なシルクスクリーンも開発されていない時代でした。

彼は版画ならではの風情を求めて、手彫りの味わいに入れ込んだわけではなく、できるだけ忠実に再現したかったはず。手で再現したコピーなので原画とかなり異なり、複製画にはほど遠いものでした。

普段あまり感じないことですが、絵はがきも版画です。普通の絵はがきは多色刷りで、一枚の紙に四種の顔料を四度転写し、四辺を裁断してできあがり。その原理はカラー写真とも似ているので、それなら写真も版画の一種なのでしょう。

さて、この絵はがきの原画は紙細工のクラフトなので、実はわずかに立体的です。色の再現が難しそうな水色に美術紙のテスクチャーも見えます。スキャナー画像の何カ所かを補整し、右下の猫を安全圏に入れました。

ブランド絵はがき
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2018/10/24

免震構造ダンパー不正検査事件|デフレ発言がご法度な嘘の好景気吹聴

1990年頃に、免震構造の建築設計に関わりました。物件は免震構造業者の自社ビルで、当時は珍しい画期的な実験建物として、補助金などもついて特別な建築許可が出ました。95年の阪神淡路地震より前です。

今や免震マンションも続々と増えています。免震ビルは敷地と建物の間にエキスパンション(伸縮)ジョイントを設け、地震で地面が強く揺れても、地下の水平ダンパーがショックアブソーバーとなり、建物は弱く揺れる仕掛けです。ビルが崩れたり、中の家具が倒れたりを防ぎます。

そのダンパー製造メーカーの検査不正が大ニュースです。ダンパーを使用中の建物があまりに広範で、車のエアバッグに似たジャパンスキャンダルになっています。こうした品質低下の不正がなぜ続くのかよりも、口にしにくい国情が深刻です。

日本国内で続く不祥事は、要するにデフレ不況が原因です。キーワードは「節約」「節減」「削減」「倹約」「縮小」「緊縮」「コストカット」。出費をとことん切り詰める思想が、検査を減らし、捨てる分を減らし、改善の手間も減らすという、平成の日本病です。いわゆる手抜き競争。検査は冗長性であり、本来は余裕であり無駄の一種です。美術品の存在と似ているかも。

カツカレー店が捨てたトンカツを、廃棄物処理業者から買い取った別業者が、格安トンカツ弁当に転用した事件と同じ動機です。そこそこ使える安い製品を消費者へという、グローバル経済下でのデフレ社会に順応した「賢い」倹約法です。しかしデフレ不況との関係を指摘するのはタブー。なぜか。

日本の歴史で最大の好景気が今だと、政府が定義した後だから。デフレ不況を指摘すると、反政府の姿勢で浮いてしまう。だから不祥事の原因に向き合えず、日本人の特性になすりつけるほかなく。実際には、国をあげた節約励行で全国の全分野で品質低下しており、不正の域でばれた分のみがニュースになります。
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2018/10/18

ジャパン・フェスティバル・ベルリン2019準備開始|場所確保に成功

ジャパン・フェスティバル・ベルリンの場所取りに成功しました。主催者による募集は、2018が終わった直後の2月にはもう始まっていて、現地の常連団体やアーティストなどはほとんど固定的に確保しているようです。

日本から出向くこちらは、国内の絶不況を押して出て行くので、ボリュームが決まる秋までエントリーが延びるのが常で、結局8月にはテーブルが全てふさがっていました。空き待ちにもつれた大きい出遅れでした。

海外は普通に経済成長し、日本だけが長期デフレ不況の特殊事情なのだから、日本の気分で海外と関係してもうまくいかないと改めて感じます。緊縮財政なる人災で、日本の美術活動全般が萎縮していることを計算に入れる必要もあり。

ところで、美術品は汎用性とは最も遠い特別な商品だから、人との出会いに左右されます。同じ作品がある回はさっぱりで、別の回には楽々売れるなど、機会のばらつきが実際に生じます。景気だけが要因ではなくて。これはアート・マネージメントでも大事なイロハです。

一回試した展示だけでは、成果の結論はごく限られるでしょう。売れなかったからすぐに作風転向するとか、去就を悩むなど極端な反応は禁物です。日本だけの特殊条件は、日本にいるとまず気づかないものだから。

そもそも現地市民は現代アート展覧会と聞いて、わけがわからないと警戒したり、不本意に足を運ぶ「がまん大会」とは思っていません。変なものを作る者は頭がおかしいとも思わない。こうした内外差も大きいのです。日本で好評の作品が現地で好評かも、疑ってかかる必要があります。
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2018/10/16

ドイツの絵はがきの色が美しい|付加価値削減で色あせた日本と対照的

消費税を上げる政策で、日本はまた景気が落ちます。上昇は唯一、導入時の1989年でした。3パーセントと引き換え、従来の物品税を廃止したからです。当時3200円の音楽CDは、物品税280円が消え消費税88円が生じ、再販価格が192円下がり3008円になりました。それからCDは爆売れ。

この時の物品税廃止で、ビデオデッキやカメラや高級レンズや三脚や、5ナンバー4ドアの軽乗用車(非商用車)がやはり大売れしました。しかしよりにもよってバブル崩壊後の1997年に5パーセントへ引き上げて、翌1998年には全国各地のCD店と書店が次々とつぶれました。消費の冷え込み。

本とCDの不振をネットに責任転嫁するのは、時系列を無視した虚偽です。国民皆消費削減による日本全国シャッター通りと同じ現象で、本とCDだけでなく駅前通りのブティックや楽器店も次々つぶれました。ネット接続する家庭がまだ珍しい頃に、本とCDの店は倒産しまくったのです。

その後、世界最大手の通販書店A社が日本で伸びたのは、外資系なので本社が日本になく、法人税を払わずに済んだからでした。日本の浮き沈みは、ネットより税制に左右されています。

2014年の消費税8パー上げで、何がつぶれたか。日本の印刷通販店で、絵はがきの種類が激減しました。生活必需品ではない物品は、生活苦が素直に反映されます。行きつけの東京店もアート仕様の選択肢を廃止して、くすんだ色の商用DM中心に転向していました。

新作の絵はがき100枚がドイツから出品者に届き、とてもきれいだとの声がありました。ドイツは絵はがきやカード類が各印刷所に豊富にそろい、日本の美術館の商品よりも、同じオフセット量産でも格段に美しく鮮やかです。プリント料金は実質日本の3分の1。こういう内外差もあります。
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2018/10/09

日本の借金1100兆円の嘘|1000京円でも問題ないおもしろ経済原理

この26年の日本は経済政策を間違い、国力が低下しました。近隣国との摩擦が激化するなど国威の衰退も目立ちます。最近ニューヨークタイムズが、その失敗をまた指摘しました。その失政の根が何かはネットにも書かれ始め、日本の借金700兆円というデマでした。

今も国民の大半が胸に刻んだ700兆円、800兆円、900兆円、1000兆円、1100兆円という数字。赤ちゃんも含め、国民一人当たり800万円以上の重い借金。日本の未来を真っ暗に変えた子孫の絶望的な負債は、実は国民の学力を低く見切った巧妙なウソでした。

日本の未来を論じる議員や評論家、会社員や主婦たちの勘違いが強固で、国ぐるみ妄想から戻れない状態です。勘違い同士が長い議論の末に、暗い未来を再確認し合う繰り返しが平成時代でした。

その勘違いとは何か。1000兆円を返す前提です。返済。国の破綻を嘆く悲観者も、破綻は起きないとなだめる楽観者も、ともに借金を返す前提で話をします。返済してがんばって零円に戻し、いつかは黒字に持って行くつもり。そんな奇行を考える国は地球上にないのに。しかも奇行と気づかない状態。

「日本の海外借金」はウソで、「政府の国内借入」です。政府プライマリーバランス(基礎的財政収支)で、日銀と他金融が出資した国債で生じる貸方円建て残高であり、日本政府が日本国民に借金している額です。赤ちゃん以上が政府に800万円以上貸しています。国にではなく政府に。しかも国民は貸した側。国民の借金ではなく貸金。

政府借入金は明治時代から何万倍にも増え、やがて一京円、いずれ百垓円(今の千万倍)になっても正常です。経済学者たちは財政立て直し急務は虚構と知る上で、「日本は借金で破綻するから節約しろ」のポジショントーク中。識者が自己実現のために国民をあざむくのは、芸術分野より経済分野がひどい。
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2018/10/06

2020東京オリンピックのボランティア募集|ドイツでは普通に払うが

22カ月後に迫った2020東京オリンピックは、運営スタッフをボランティアで募っています。無料奉仕の予定が日給千円に変わり、しかしこの安さはタダ働き批判をかわすアリバイ同然で、限りなく値切りたい主催側の意向と受け取られています。関係者が利益拡大するため。

このボランティアの誘い文句で多いのは、「世界の人とつながる」「生涯の記念になる」「運営に関わった誇り」「外国語の訓練になる」「後の就職面接で有利になる」「有名選手の演技を無料で見られる」などなど。

「そんなに遊んでいられる仕事なの?」という疑問はさておき、ボランティアでなくアルバイトにすべきとの意見も多いようです。オリンピックは国民体育大会と異なり、民間のショービジネス興行としてフェアと呼ぶべき商活動だから。

民営路線を強めたのは、1984ロサンゼルス五輪でした。アマチュア大会を改めプロスポーツを集めるイベントに転向し、サーカス団に似た興行です。2020東京五輪はスポーツの秋を避け、セミが鳴く真夏に行う予定で、アメリカのプロスポーツの夏休み期間にはめ込む取り引きです。

1964東京五輪のスタジアムを最近急いで取り壊したのは、建設会社との取り引きになっていて、景気刺激策の利点もあるのですが、財政出動すべき場面でスタッフの安報酬で緊縮財政に戻るのは不合理だという、経済面と倫理面の疑問もあります。今のブラック日本国に似合いすぎる問題です。

我々はドイツのジャパン・フェスティバルで、バイトに日給千円でなく時給約千三百円払います。日給は東京五輪の十五倍。珍しい体験を報酬を低く下げる理由とする「やりがい搾取」は日本に非常に多く、人権感覚も違うのかも知れません。
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