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2018/11/30

外国の美術展には落選の失格がない|公募コンテスト展対アートフェア

日本とドイツの美術展の大きい違いを、改めて簡単に述べます。まず、知らない美術家同士のミックス団体展は、日本ではほぼ全てが公募コンテストです。制作競技会であり、当選と受賞の発表会です。採点は審査員。

外国では全く異なり、多くがアートフェア形式です。販売会の意味です。市場に売り物を出してお客と文化交流します。文化交流とは見せるだけでなく、店の意味です。外国では展覧会は売店です。採点は市民。

公募コンテストでは落選した美術家は失格して展覧会に参加できず、審査料が戻らず終了。対するアートフェアには落選の概念がなく、必ず展示されます。スタッフは公正な立会人などではなく、出品作をセールスする画商です。

アートフェアでは、この作品は人々に見せちゃだめという道徳が無用だから、作品づくりの尺度も異なります。美術家にとって、審査の関門ではばまれることはありません。具象画壇の公募展に抽象作品を出して、会派の意にそぐわないからと懲罰的に落選させられたりも起きません。

だから我々のドイツ展示でも、日本の公募展なら同じ場所に並ぶことのない、異種作品同士が隣り合います。出品者は、自分の作風が許される募集組織なのかを調べたり、対立抗争の渦中で締め出されたりの心配がいらないわけです。

現地の市民は世界の奇抜な作品を見慣れ買い慣れているから、斬新すぎるとか理解できないと怒り出したりもなく、「おもろい」「珍しい」「日本的」などと次々と判断します。コンテストの審査員は採点しても買いませんが、市民は採点して買うので、どの部分のハードルが高いかも日独で異なります。
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2018/11/26

ジョン・レノンの命はどうすれば助かったか|12月8日のニューヨーク

12月8日はパールハーバーでの開戦日で、音楽界ではジョン・レノンの命日です。ビートルズ解散後も印象的な名曲がポツポツ出ていたジョン・レノンが、ニューヨークの自宅近くで撃たれたのは1980年。犯人の動機は陰謀でなく、有名人にからんで有名になりたかったという。おそらく発達障害。

ジョン・レノンは、どうしていれば撃たれずに済んだのか。ひとつの答は簡単で、日本に引っ越していればよかったのです。ジャズドラムのアート・ブレイキーや、ロックギターのマーティー・フリードマンのように。

トーキョーでなくニューヨークへ引っ越した理由は、悲しい気分を誘います。というのは、ジョン・レノン自身はニューヨークへ住みたくなく、イギリスに居たかったから。トーキョー移住が選択されなかったのは、ひとつは小野財閥の別荘が地方にあって足りていたからかも。

ニューヨークで受けた不歓迎はオノ・ヨーコが語っていて、まずCIAが一家を電話盗聴していたという。合衆国公文書にも記録があったはず。市民を動かす力のある平和運動のカリスマに、東西冷戦下の覇権国政府は国益を懸念し、当局が警戒したのでしょう。反戦平和運動は通りはよくても、跳ね返りもあるようで。

裏返しに、ニューヨークからの情報発信は、効き目が倍加するメリットがあったわけです。トーキョーだと、世界的アーティストならむしろ余生を送るイメージになるのかも。ニューヨークの方が刺激も大きくエキセントリックで、勢いやトピック性も拡大されるから。美術で考えればわかりやすい。

刺激のひとつが違法行為のたやすさです。絶望者は自殺を選ぶトーキョーと違い、ニューヨークには有名人を狙って有名になる奥の手があると、世界が知らされました。日本では自宅所持が完全禁止の金属薬莢式連発短銃も、アメリカでは小口径ならスーパーマーケットで売られていたのも近い過去でした。
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2018/11/20

ホームレスへ寄付を募るアメリカの美談|クラウドファンディング詐欺

アメリカの田舎道で、女の車が燃料切れとなった。手持ちの金がない。たまたま近くに住んでいたホームレスの男がわずかな全財産をくれたから、燃料を買えた。助かった女が恩返ししようと、クラウド・ファンディングでホームレス男の生活費の寄付を集めた。そんな美談がありました。

テレビ、ラジオで時の人となりゲスト出演となった。このホームレスの美談は作り話で、三人は詐欺で逮捕されました。検察官の調べでは、寄付総額4500万円は全額、ドイツ車や高級ブランドバッグ購入と、国内旅行やカジノ遊興費に使われていたそう。3人はカジノの常連客らしく、裏切りで内輪の訴訟も起きていて。

日本国民が作り話と知らず感動した例は「一杯のかけそば」ですが、寄付の美談も早くから突っ込まれています。幼児の難病がアメリカで直るとして高額治療費の寄付を募ると、1億円以上も集まった事例が複数あり。しかしネット掲示板で疑問の声が続出し、炎上騒ぎになったあれです。

両親と子どもが渡米すると思いきや、親類や知人も同行するという。渡航料やホテル代、観光費用や友人へのおみやげ代も、寄付金から出しているのだろうという、せこくて真っ直ぐな疑惑が次々と出てきたのです。医療に使った余りは、何に使うつもりなのかと。

この時のネット意見は、「寄付金をどう使おうが受けた者の自由だ」と「名目以外へ使えば詐欺になる」に分かれました。ついに掲示板の有志が難病の家族に会い、会計報告させて余りは慈善団体に寄付する約束を取り付け、チェック役になったという。

それもあり日本のクラウド・ファンディングでは、返礼なき寄付募集は公益法人しかできません。一般人は返礼品を用意するコースしか選べず、また市販製品や金券の返礼は禁止されています。これは作り話の詐欺を防いで、ふるさと納税が新設した規則も先取りしています。
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2018/11/13

最新ネットサイトが大まかなデザインの理由|HTMLからCMSへの流行

インターネットの作家ホームページで深刻な現実は、流行りすたりのテンポの速さです。がんばって作っても、一生ものになりません。国際ネット管理団体が、世界中のサイトに仕様の変更を要求してくるからです。近年は不思議なことに、大まかで大味なデザインが増えています。なぜか。

大味でアメリカンな雰囲気のサイトが急増した理由は、三つあります。ひとつはパソコンとタブレット端末とスマホの、三種の画面サイズを一個のプログラムで兼用するからです。一種のコストダウン。指で押すスマホ向けにパーツ間隔を広めにとる必要があり、余白が目立つのです。

また、スマホ画面は縦向きでは幅の画素が少ないから、パソコンと兼用のサイトは画面の幅により変形するように作られます。そのマージンも加わり、従来のHTMLセットのような芸の細かさは消え、大味で大画像なサイトが増えたのです。

さらにサイト制作と管理を、HTML制作からCMS方式へ変えるブームです。XHTMLは消えてHTML5が公式となりましたが、次世代のCMS方式ではHTMLプログラムを手作りしないから、コンテンツ吸収マージンも大きめです。その方式の最大シェアは、Word Pressというフリーのブログ管理アプリです。

何と管理アプリごとテンプレートをサーバーへロードし、クラウドでサインインし管理します。動作にはUNIX系SQLサーバーなどのデータベースを使い、中グレード以上の高めサーバー契約が必要です。無料じゃない。定型に従うことが推奨され、個別デザインの差異化は捨てています。

CMS方式サイトはアメリカ製が多く、全てがあたかも数人で作られたかのよう。日本の情報サイト同士も、そっくり似が急増しています。車や洗濯機が同時代にどのメーカーもよく似るような、模倣の連鎖がさらに加わっています。しかし過去の流れでは、やがてすたれて次へ代わるはず。
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2018/11/08

ランサムウェアに感染しちゃった|作品画像データのバックアップ技術

春からパソコンのトラブル続きで、何日か前に通信機がランサムウェアにかかりました。ランサムは身代金の意味で、ウィルスの一種マルウェアに分類されます。パソコン内のデータを暗号化でロックし、解除希望なら金を払えというゆすり型です。感染ルートはCMS方式ブログサイト制作管理ソフトが疑われます。偽装拡張子がネットになく、世界初の新型らしく。

感染パソコンから直接アクセス可能な全ドライブに被害が及びます。前に韓国企業が感染し、サーバーデータと各パソコンデータがロックされ、1億円以上の身代金を要求された事件がありました。犯人が手がかりを残すわけもなく、身代金もデータも両方失ったとされます。

こちらのガイダンスでも、128ビット暗号データの復元は不可能です。予防策ですが、最も注意がいるのはデジタル写真家です。次に危ないのはCG作家。売却済みキャンバス画の撮影画像も、戻ってこない保護資産です。もちろん日記や帳簿類も。

バックアップの基本に戻ります。元データが1個あり、バックアップは最低2個、合計3個の保存メディアが必要です。根拠はデータをピンポンする数学パズルです。そのバックアップメディアをネットパソコンに常時接続していると、ランサムウェアなどマルウェアによって全滅させられます。

自分が誤消去した時に書き戻す補充用で考えては足りず、ネット側からたどれない不便な位置に隠さないと、今の時代は無意味です。こちらもその態勢でしたが、それでも一時置きしていた新ファイルは失われました。

写真アート類の画像データは、全てをDVD-Rなど改変不能なメディアに2度以上コピーし、先の3個とは別に玄関の低い位置に置くなど、合理的な保全が望まれます。できるなら、自宅と実家の両方に置きたいところ。
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2018/11/05

ドイツの美術展会場は雑でカジュアル|日本は整然ときれいなのになぜ

日本国内にもアートフェアがあり、参加した不満に作品が売れてとられる上納金の高さがあるそうです。それは理由があります。話は回り道して、ドイツ展企画の後で「よかった」の声は、参加者全員とは限りません。あれっと感じるのは、会場が思ったより雑な点です。

日本の美術展は、会場を白く整えたピュアな雰囲気が多い。関係ない備品類を白幕で隠し、気が散らない空間にします。冠婚葬祭の場と同じ。対してドイツでは殺風景な室内も多く、ざっくばらんな普段着感覚や即席仕立てが意外にあります。日本はすっきり清潔、ドイツはごちゃごちゃ。

日本のイベント会場は、美化と雰囲気づくりを重視します。これが箱物行政など、器の高級化に熱が入る伝統ともつながるでしょう。場をきれいに整えた付加価値的な費用を、売れて気をよくした美術家へ追徴するわけです。

日本のアートフェア主催団体は、作品売り上げの5割とることもあるという。だから画商は参戦が困難です。一方、ドイツのアートフェアには主催団体への上納がありません。最初の場所代だけ払えば終わり。売り上げの2~3割を画商がとり、美術家は自宅にいても7~8割とるというように、出品側だけで山分け。

ドイツで会場美化が手抜きされるのは、現代アートの売買が盛んだからでしょう。お客は買い物が目的だから、場所が執務室でも丸太小屋でも草原でも、作品の中味を注視するのに慣れています。欲しいのは展覧会場の雰囲気ではなく作品。美術を信じている国だからか。

ドイツで器が立派だと、作品価格に転嫁されている心配がお客に起きるでしょう。日本なら避ける粗末な場でもドイツなら売れるから、古建築を廃墟状態で活用するイベント会社が各地にあるほど。当然我々も空気を読み、買える範囲に作品を入れて展覧会を完結させます。
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2018/11/02

変態仮装行列と呼ばれた渋谷ハロウィン騒動|日本のデフレ不況の文脈

2018年のハロウィン祭が国内各地で行われましたが、渋谷では暴動になり事件化しています。地元商店街からも「変態仮装行列」と呼ばれ、話題が世界に拡散中。しかし暴動の原因をコメンテーターが語る時に、どうしてもブレーキがかかる部分があります。

「27年目になる長期デフレ不況によって、人生が丸ごと停滞の時代に含まれる若年層は、いつでも狂い出せる心因と背中合わせ」というような分析は厳禁です。なぜかといえば、今は空前の好景気だと政府が定義しているから。政府の顔に泥を塗ると、政府から報道ソースがもらえなくなる。

今は不景気だという直接表現だと、テレビ局から排除され職を失い所得を減らす危険に、コメンテーターや局職員たちもさらされます。自由トークは許されず、人を虐げると何が起きるかも今の日本でアンタッチャブル。

渋谷のあの場所は、国際的に東京の顔です。テレビニュースでも素人動画サイトでも、東京の映像といえば、あの向きから見た渋谷交差点と街並みがよく出てきます。渋谷に関係がない日本全般の話題でも、象徴的に渋谷の写真が使われます。

養護施設の19人刺殺事件が起きた時も、職員だった若い男が故意犯かつ確信犯という、その動機を報道は説明できませんでした。しかし日本版の格差社会にきちんと向き合えば、犯人の思考や情熱や狙いは順当すぎるミエミエの犯行だったのです。首をかしげる人こそ世情にうとい。

調査基準を変えて不景気を好景気と言い替え、庶民の滅入る気分が悪化し、何かの拍子に狂う下地はできています。庶民はそんな思いを芸術表現にでも向けようにも、市場もなく無意味。やむなく粗暴な破壊行動で発散した「日本死ね」のきずなはミエミエすぎ。要は、秋葉原の続き。
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