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2021/03/31

デジタル版画の増刷はお金の発行に似ている|需要と供給を理解

コロナ以前から日本の病気はたった一つだけ、デフレ不況です。原因は自国通貨を削減してきたからです。お金は使えばなくなるから、皆で使わず温存しようという宗教的信念です。1997年4月1日から続けた緊縮財政と消費税増税です。ところがこの因果関係を国民は理解できません。

理解の障壁は貨幣観が間違っているから。全員がそろって間違っているから、正す人がいない状態です。「世界はテーブル形で、海の端には滝があって海水が落ちていく」を全員が信じていた、あれの現代版が貨幣を誤解する現象です。

これはデジタル版画で考えるとわかりやすい。デジタル版画がお金と似ている最初の点は、必要なだけ増やし続けられる融通です。手刷り版画と違い、デジタル版画を欲しい人が現れれば、全員に行き渡らせられます。つまり総量が決まっていなくて、後から増やせるのです。枯渇や窮乏があり得ない。

「現代のお金はいくらでも出せます」と言えば、「無限に出せるなら、この世はお金で埋まるぞ」などと揚げ足取りが出てきます。この誤解は、デジタル版画を無限に出す画家がいないことで謎が解けます。多く出しすぎるとあり余るので、1枚の価値が落ちるからです。

たとえば同一図柄の版画を一回に5枚ずつ買わされるなら、世にだぶついて価値は暴落します。お金も同じであまりにも多く発行して総量が激増すると、ある臨界点から価値が落ち始めます。超インフレーションです。お金の臨界点は新型コロナのマスクや小麦粉で起きたとおり、買いたい商品が品切れ続きの時です。

そこで各国政府は、国産品を開発し増産して品切れを防ぎ、お金も増刷して売れ行きを上げて国力を上げます。日本は国産品が豊富で世界一インフレから遠いのに、貨幣観の間違いで自国通貨をわざと削減して、24年間もデフレです。ユニセフから女性と子どもの貧困国に指定されています。最後の頼りは外圧か。
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2021/03/25

アメリカの増税は貧富の差を縮める目的らしく|日本では理解困難

アメリカのバイデン大統領は、増税へ向けて動いており、財界の抵抗はやはりあるようです。トランプ大統領は新型コロナ対策の一環で減税しましたが、対策強化での増税はどういうサインでしょうか。

経済学の教科書は間違っていて、税金は財源ではありません。各国政府はお金を発行できるからです。発行物は発行者には金目のものではないから。デジタル版画と同じで、持っている人から巻き上げる必要がありません。必要数を自在に追加できるから。増刷して全量を増やします。

ではなぜアメリカは増税するのか。デフレ不況の日本とは反対に、アメリカはインフレ好況だからです。好景気なら増税して、不景気なら減税するのが鉄則。つまりインフレ率の調整です。財源を得る目的なわけはなく、理にかなっています。

そして民主党政権なので、低所得層に対するケアが公約で、富裕層に増税します。わずかであれ貧富の格差の縮小です。この説明は、日本だとまず間違って解釈するでしょう。「富裕層のお金を貧困層に回すのだな」と。これは全く間違いです。

国税の機能は主に四つあります。通貨信認、景気調整、格差縮小、悪事懲罰です。格差縮小は累進課税で実現されます。インフレ率は貨幣過剰で起き、富裕層が過剰なのだからそこの税率を階段状に高め設定します。回収した税は廃棄されますが、財政出動として還流されます。

景気調整はインフレ率のコントロールを指し、金欠の貧困層を増税すれば当然国は傾くから、富裕層の税率を調整して社会を安定させるわけです。アメリカの場合、連邦準備銀行FRBが政府から独立しているので、様々な陰謀の本が出ていますが、それらも間違った経済教科書が発端となった妄想です。
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2021/03/18

アメリカのコロナ対策費用で財政が悪化するデマ|デジタル版画に似て

国際経済ニュースにもフェイクが多く、そのひとつがコロナ対策費を使えば財政が悪化するという嘘デマです。実は日本に限りません。お金の意味や機能の歴史転換点が1970年代と新しい出来事なせいで、経済学の本を改定せずに古典が幅をきかせたままになっています。重鎮の地位保全。

コロナ財政悪化の虚偽報道の典型が、アメリカ政権の一人15万円のドル給付です。「国民は楽になるが、国の財政は悪化する」という真っ赤な嘘です。各報道機関が伝えて国民は受け売り、間違い認識を固めて国内の経済悪化を肯定しています。

この認識間違いの根っこは、政府が自国通貨を発行した時に、政府の貸借対照表の貸方欄に負債計上する簿記への誤解です。緑色のインクのあれ。サラリーマンは貸借対照表と生涯関係ないから、理解不能の領域に都市伝説ができてしまうのです。

政府が借りたお金を将来返さないといけない、返せないと破綻するという、イカレた論法をみんなで共用しているのです。いつ誰に返すかは誰も言わない。ところが画家、特にデジタル版画の関係者は、この都市伝説に簡単にはだまされません。

自国通貨はオリジナルCG版画と似て、枯渇しません。たとえば『モナリザ』は知られた原画は1枚、または2枚説ですが、ジクレー版画の『モナリザ』は世界に数百万枚あるでしょう。数千万枚や数億枚に増やすこともできます。足りているから増やさないだけで、足りないなら足りるまで増やすだけ。お金も同じ。

画家がデジタル版画を発行して、発行した百枚を誰かにそっくり返済する日はいつでしょうか。画家が日本政府で、版画が預金通帳です。自分のオリジナルなのに、返せず破綻する奇妙な妄想は、人類のどういう脳の仕組みなのでしょう。
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2021/03/11

宮城や福島の津波で考える基本の基本は何か|東日本大震災10年

日本美術をドイツで展示するイベントの前身は、2010年の展示から始まりました。翌年に東日本大震災。活動の中にも被災と社会問題が入ってきました。当時スマホやカメラ撮影された動画が多くあり、かなりの量を毎日見たものです。あれから10年ですが、「基本」の重みを感じます。

今では細かいエピソードがネットにあり、亡くなったケースや助かったケースで、あらゆる思いが噴出しています。全てに共通するのは、ひとつの大きい無念です。「あの時は基本を知らなかった」「だからしくじった」というもの。

小学校や幼稚園が典型で、大地震が起きたので児童を各家庭へ帰そうとしました。先生と生徒が行列したり、送迎バスを出した幼稚園もありました。それらのひとつずつに理由と必然性があり、あの時は適切な判断だったのでしょう。しかし一番の基本が多くに抜けていたのでした。

「津波というものが、ああいうものだと初めて知った」「今では知っているから、もうしくじることはない」「しかしあの時は名称だけを知っていた」「全員が高台にいたのに、帰宅させようとわざわざ低地へ降ろしてしまった」。「わざわざだと今なら言えるのは、正体を見て知った後だから」。

日本の貧困化も似た知識不足の恐ろしさです。日本経済の低落と国全体の貧困は、自国通貨の量を故意に削減して起きています。円を発行してばらまけば正常に戻る簡単な話です。IMFや欧州中央委員会は、新型コロナ恐慌で世界大戦を再度起こすまいと、造幣とばらまきで飢え死にを防ぐ積極財政を宣言済みです。

ところが日本ではほとんど知られません。知識がないと大地震後に低地へ降りてしまう、それが日本経済でも起きています。所得喪失で路上生活になってもあきらめない男性と違い、女性は列車に飛び込んでいます。知らない人だけが集まり知恵を出し合っても、その集団はコロナ恐慌の波にのまれて死んでしまうのです。
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2021/03/05

小中学校の鉄骨補強と日本経済の規模|コンクリートから人への貧困化

日本国内の小中学校の校舎を見ると、窓ぎわにV形やX形など太い斜め材が目立ちます。欧州ではあまり見ないでしょう。阪神淡路大地震をきっかけに広まった、耐震補強というリニューアル法です。耐震診断と呼ぶ現地調査から始めます。

当時の青焼図面製本が、発注した市役所や県庁に残されています。学校の場合は、ラーメン構造の外構枠を利用して、戸外側に鉄骨ブレース(筋交い)の剛体をはめ込む方法。鉄骨ビルだと内部に加えるために、内装をはがし取り一新します。室内が少し狭くなりますが。

日本の耐震診断の構造計算ソフトは、世界一進んでいます。国土交通省とゼネコン構造部、構造設計事務所、大学建築学科が連携し、論文も充実しています。しかしそれだけにコストは高いのです。オフィスビルの例では、建て替え新築の半額もかかりました。取り壊しは別途なので、差は十分あるのですが。

そこで政府の通貨発行権で補助金を出して、オーナー側は銀行融資で払いました。新基準を義務として、後から建てたビルは震度7でも倒壊しない厳しい設計です。後に全国で続発した地震に間に合ったケースも多くあり、間に合わないビルは壊れました。

前に構造計算のミスや不正で事件になった建物も、大地震で結局どれも倒れなかったのは、大きいマージンをとるからです。未来の地震や台風は、きっと過去最大より大きいとの想定が業界にあります。他国で建てた日本製の橋や塔が倒れない理由がこの伝統ですが、建設費はやはり高い。

おもしろいことに、建築を丈夫に建てるコストがそのまま、日本の経済規模GDPを大きくする宿命です。コスト高なほど貧乏になると思いきや、貨幣発行総量が増える原理なので、経済大国になり庶民の暮らしも向上します。その逆を行く風潮が、「コンクリートから人へ」という経済衰退方向のムーブメントでした。
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